
したたかに呑んで帰宅したとき、「みそ汁が飲みたい…」と思ったことはないだろうか。かといって深夜からキッチンに立つほどの気力もなく、湧いた欲望を抑えて床についてしまう。特に真の呑み助というものは、シメは米でもアイスでもなく、体中に行き渡ったアルコールを中和させてくれるみそ汁を欲するものなのだ! そんなマイナーかつワガママな意見をコンセプトにしてしまったのが『1CHIDO°』だ。
(写真上)『ハタハタ汁』(¥850)秋田の特産ハタハタの一夜干しが丸ごと一匹入った仙台味噌仕立てのみそ汁には、ニンジンやレンコンなどの根菜類もたっぷり
店舗デザインなどを手掛けるスタジオナガレのスタッフたちが、私同様、呑んだ後にみそ汁を飲みたいと思ったことがオープンの背景。また、モノにこだわるクリエイターたちが運営しているからみそ汁もかなりのグレード。
みそ汁が¥800以上と聞いて「高ッ!」と思ったあなたは、みそ汁をナメている証拠。飲んでみれば納得で、宗田鰹から作られるそうだぶし、さばぶし、昆布、煮干など数種のだしをブレンドし、全国の味噌を研究し尽くした料理長が、旬の素材に最適な味噌と合わせるというもので、絶対に家庭では出せない味なのだ。

ボリュームも、もはやみそ汁というより一品料理級。事実、シメではなく肴として楽しむ人がいるという。また、地方出身者たちが故郷のみそ汁を懐かしがるケースも多いとのこと。遠く故郷を離れ、都心に住まう人々の『味覚のUターン』としての役割も大きく果たしているようだ。

もちろん、バーとしても秀逸。オーセンティックなバーは敷居が高く、妙にカジュアルなノリのバーは周囲の雑音が癇に障るという理由で、バーを避ける女性もいるだろう。しかし、ここは隠れ家的で心地よく、ひとりでも気負わずに入れる。そしてバーの要であるお酒の充実度もすばらしい。シングルモルトとラムを主体にし、セレクターは相当の酒好きであることが垣間見られるラインナップだ。シングルモルトの強烈な香りが苦手な人もぜひトライしてほしい。みそ汁同様、その奥深さに魅了されることだろう。
(写真左から時計回りに)『お麩のみそ汁』(¥850)季節感あふれる3種の生麩(よもぎ・粟・カボチャ)と根菜を西京味噌仕立てで京風に。こっくりとした美味しさは絶品 /『うっちん汁』(¥800)沖縄でもレアなうっちん味噌仕立て。味噌にウコンがブレンドされ、ちょっとクセのある風味が後を引く美味しさ /『しじみ汁』(¥800)酔い冷ま しに最適なしじみ汁は、最もオーソドックスで人気の一品。島根・宍道湖産の大粒しじみと名古屋の八丁味噌で仕上げた
ここのみそ汁を味わって、子どもの頃に我が父が「旨いみそ汁が作れれば嫁に行ける」とよく言っていたことが実感できた。みそ汁はシンプルだが、単にだしに味噌を溶くだけでは完成しない奥深いものということを伝えたかったのだろう。父の思いとは裏腹に、バーでみそ汁をすする側に成長してしまったが、気持ちのよい空間でいただく旨い酒とみそ汁があれば幸せかも、と思う今日この頃。ケ・セラ・セラ精神でお酒を楽しむもよし、故郷の味を求めて郷愁に浸るもよし。久々に、通い詰めそうな一軒に出会えた予感がする。(text / miho sasaki、photo/kawakami shu remy)
(写真左)『ダイキリ』(¥1,000)『山崎18年ソーダ割り』(¥1,550)ラムベースのダイキリは騙されてしまいそうな飲み口のよさ。シングルモルトビギナーへは、「山崎 18年」を軽やかなソーダ割りがおススメ。ソーダ水も山崎の仕込み水を使って作られたこだわりの逸品

(写真右)『グレンモーレンジ シェリーウッド・フィニッシュ』(¥1,000/ショット)バーボンの空き樽で10年間熟成させ、シェリーの空き樽で2年間も仕上げ熟成を行なった花のようなデリケートな香りにシェリーの甘美な香りが調和された逸品 / 『ラフロイグ カスクストレングス10年』(¥1,200/ショット)スコッチウイスキーを代表するアイラ・シングルモルト。ドライな香りと口あたりを味わいたい
1CHIDO°
東京都港区南麻布4-13-8 第47平安ビル1F
Tel:03-5449-1414
営業時間: 18:00~翌5:00
定休日:不定休
1CHIDO°が制作協力した『お味噌のことが丸ごとわかる本』(枻出版/¥1,300)が、全国書店にて絶賛好評発売中! お味噌の奥深さがわかる一冊










