イギリスのパブが、イタリアのバールがそうであるように、地域に馴染み、周囲に暮らす人々から愛されているバー“カーライル”。西麻布のマイル・エンド・バーで修行を積んだオーナーバーテンダーの吉越誠一郎さんが、海外のバーのように日常の中にあって身近な存在になれる空間をと2年前、池ノ上にオープンさせた。
「会社に近い繁華街ではなく、家の近くでゆっくりくつろいでもらえる場所を探していた」という吉越さん。最終的に選んだ池ノ上は、渋谷と下北沢という繁華街の間に位置しながらも、住宅と個人商店に囲まれた下町らしさの残る地域。そんな街の雰囲気に調和するように、店内は手作りによる素朴感とアンティークのインテリアなどが溶け合って、初めてでもなぜか懐かしさが感じられる。独特の親しみやすいムードと、人と出会うのが大好きという吉越さんに引寄せられ、店内は夜な夜な常連たちで賑わう。その多くは、オープン前の工事中から何ができるのだろうと気にしていた地元の人々。客層は3歳から80歳までと幅広く、手料理を持って来たり、タバコだけを買いに来たりと、“お酒を楽しむ場所”以上の存在として愛されている。

(写真左):10種類のスパイスが調合された秘伝のタレ、野菜を漬けたウォッカなどが入ったカーライル自慢の逸品、ブラッディ・メアリー。ちょっぴり飲みすぎてしまった夜には、アルコール控えめなどのリクエストも可能。好みの味や強さを伝えれば、思い通りのカクテルが目の前に。
(写真右上):原料の大麦を泥炭で乾燥させるときに生まれるスモーキーな香りが特徴のスコッチ・ウィスキーはグラス800円~4000円までと豊富な品揃え。初心者でも楽しめる3種はこちら。写真左から、Dalwhinnie15(ダルウィニー)\800、Glenfarclas12(グレンファークラス 12年・オールドボトル)\1,500、Glenmorangie18(グレンモーレンジ 18年・オールドボトル)\2,200。10月から登場するお手製のビーフジャーキーと一緒に。
(写真右下):人と出会うのが大好きというオーナーバーテンダーの吉越さんは、無類の旅行好き。インド、ネパール、インドネシアなど、これまで15カ国ほどをひとりで歩いてきたという。「バーテンダーとして人とどう接するか、旅先での出会いから学ぶことが多い」と話す。
そんなカーライルの自慢は約150種も常備されているスコッチ・ウイスキー。
オークションで入手した珍しいヴィンテージ銘柄も並んでいる。好きが講じてスコットランドで半年を過し、全蒸留所を周りながら独学でウイスキーについて学んだほど。「カーライルとは、イングランドとスコットランドの国境の町の名前。このバーが、日本ではあまり知られていないスコッチへの入り口になればという願いを込めてつけました」。
こんなオーナーの熱意はスコッチ・ウイスキーだけでなく、スタンダードカクテルにも反映されている。“カーライル”らしさをとの発想で、オリジナリティ溢れる自慢の味がいくつも生まれているが、信望者の多いブラッディ・メアリーもそのひとつ。ひとくち含んだだけで、まるで野菜スープのようなコクと香りが口いっぱいに広がり、濃厚な飲み口も喉に心地よい。美味しさの秘密は、ベースとなるウッォカに漬け込まれた野菜と、10種ほどのスパイスを調合した秘伝のソース。添えられているのは、お隣の八百屋から仕入れる新鮮なセロリ。ぱりっとした歯ごたえと香りも一緒に楽しみたい。
アルコールを控えめに作ってもらうことも可能なので、飲みすぎてしまった夜の締めくくりに、というのもいいかもしれない。リクエストによって、自分にぴったりのお酒を用意してくれるので、ついつい通いつめてしまいたくなる。
こんなバーが、家の近くにあったなら…。思わずそう思ってしまうバー・カーライル。だが、こんな居心地の良いお店だからこそ、わざわざ遠くから足を運ぶ人も多い。一度足を踏み入れたら、あなたにもきっとその理由がわかることだろう。
( text / jun makiguchi photo / pawel jaszczuk)
(写真上):穏やかで優しい人柄がにじみ出る吉越さんのたたずまいも、カーライルが愛される理由のひとつ。「カクテルを作ることは、美容室がお客様のイメージに沿ってカットを行うのと同じ。お客様とのコミュニケーションが大切」。吉越さんの木目細やかな心遣いに魅了され、一人でふらりと立ち寄る女性も多いとか。
(写真下):住宅地に静かに佇むカーライルの目印は、「551 探偵事務所 この奥」と書かれた不思議な看板。常連である映画監督、林海象氏(『私立探偵 濱マイク』)から贈られたもの。「この看板についてはよく尋ねられますね。実際に、調査依頼があったこともありますよ(笑)」。演劇、映画などの関係者が多い地域だけに、マスコミ関係者も多く集う。常連同士で話が弾み、新しいアイディアが生まれることも。
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BAR CARLISLE バー・カーライル
東京都世田谷区北沢1-8-2 ハイホーム桐山1F
Tel:03-5454-3103
営業時間19:00〜5:00 定休日:日曜
内装、カウンターなどは、吉越さんこだわりの手作り。「以前からあったような雰囲気のお店にしたかった」と、仕上がりはどこかレトロ調。足を踏み入れたその瞬間から、懐かしさを感じさせてくれる。理想は、地元の人でいつも賑わっているイギリスのパブ。一人で目の行き届く広さにこだわり、カウンターにはわずか8席のみ。
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