パフォーマンスアートや女性を被写体にした写真シリーズ「美人画」を発表し続ける現代美術家・松蔭浩之。「FINAL HOME」をはじめとしたコンセプチュアルなファッションデザインを展開するデザイナー・津村耕佑。その二人のコラボレーションとして季刊誌「ART iT」で過去3年間、9回にわたり繰り広げられた連載「妄想オーダーモード」。本展では、松蔭×津村の妄想をさらに拡大すべく、その連載内容を再構成、写真作品と衣装を配したインスタレーションとして提示する。

「妄想オーダーモード」の手順はこうだ。まず、デザイナー・津村耕佑が「オーダーメイドを特定の人物に、こちら(デザイナーサイド)からお願いに行く」。津村のイマジネーションを手がかりに浮上した候補者(モデル)へのプレゼン/対談を経て、さらに妄想を膨らませ、世界中にたったひとつの服を制作する。ただし、大量消費システム上での流行を考えながら新しいデザインを生み出す=ファッションデザイナーという立場ではなく、自身のリアリティーに根ざした作業を展開する実験としてである。
(写真左)金原ひとみ #1 2005
© Hiroyuki MATSUKAGE Courtesy Mizuma Art Gallery
そうして出来上がった服は、モデルが着ることによって完成する。そのモデルというのが、日本が誇るトップモデル・山口さよこ、女優・鶴田真由、グラドル・佐藤江梨子、芥川賞作家・金原ひとみ、日本画家・松井冬子、文筆家・工藤キキ…ほか、各界で活躍する9人。それぞれに高濃度のキャラクターを持ちながらも、本展覧会においては、結果としてこの作品世界ならではの新たな一面を見せている。
ここで重要なファクターを担ったのが、写真家・松蔭浩之だ。津村耕佑とモデルによって具現化された妄想を、撮影する=「アイコン化」するという最終工程。奔放に渦巻く妄想と女たちの多様な個性をうまいことまとめあげるという、大仕事である。 それを成し遂げた松蔭氏に話を聞いた。
―津村氏の妄想を撮影するにあたって、心がけたことは?
津村さんは、この「妄想オーダーモード」で、男性として女性に抱く本能的な意識を抑制し、純粋にクリエイターとしての創作意欲を作品にしているから、僕も写真家として純粋に取り組みました。そこにあるものをただありのままに写すという「写真」本来の意味に立ち返ったとでもいうか。出来上がったものは、ファッション・フォトとしては弱いし、ポートレート(肖像写真)とも少し違う。証明写真という言葉が適切かな。
―今回モデルとなった9人の女性たちは?
山口さよこさんなんかはさすがで、何もしなくてもすぐキマるんですよ。金原ひとみさんはやっぱりこういうのに慣れてないからはじめ緊張してたようだけど、服を着たら喜んでハイになっちゃって、うまい具合に緊張がほどけたみたいでしたね。松井冬子さんも撮られ慣れてるわけではないんだけど、同じ現代美術家ということもあってか、こちらの意図を察して動いてくれたような気がします。みなさん終わったあとは、「夢から覚めた」って感じでしたね。
―これまでも女性を撮り続けてきた松蔭氏。「女性」にこだわる理由とは?
やっぱりよく分からないからですね。だから頑張ろうとする。僕は女性に対してはシャイで、特に美女はもうお手上げなんだけど、女性は勘がいいから、むこうが察してやってくれる。それから女性特有の確信犯・共犯者的な意識ってあるじゃないですか。撮影はカメラを通してのコミュニケーション、女性に助けられての共同作業ですね。
津村耕佑による妄想。モデルたちによるそれらの表現。そして松蔭浩之による記録。あなたもこれを見て感じ、はたまたそこから自由に妄想を膨らませることで、このセッションに加わってみてはいかがだろうか。
RELATING MATTER
展覧会に合わせて発売された単行本
『Fantasy Mode』(著:津村耕佑 写真:松蔭浩之)
ミヅマアートギャラリー、各書店にて好評発売中!
B5変形 116ページ
発行:グラフィック社
定価:¥2,625(税込)
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松蔭浩之×津村耕佑「妄想オーダーモード」展
会期:2007年6月6日(水)〜7月7日(土) ※月曜・日曜・祝祭日休廊
時間:11:00〜19:00
会場:ミヅマアートギャラリー 東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
Tel 03-3793-7931
アクセス:東急東横線・日比谷線中目黒駅より徒歩7分
料金:無料
(写真右):『妄想オーダーモード』会場風景 2007 撮影:宮島径
Courtesy Mizuma Art Gallery
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