水を飲み、食べ物を入れ、花を生け、大切なものを保管する……「うつわ」は私たちの日常生活に当然のように存在し、これら命につながる行為を支えるものとも言える。東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTでは、三宅一生ディレクションによる、陶作家ルーシー・リィーとジェニファー・リー、木の作家エルンスト・ガンペールの3人展「U-Tsu-Wa/うつわ」が開催されている。
(写真上)安藤忠雄による会場構成も展覧会の魅力のひとつ。うつわたちの造形美と素材感に魅せられた彼は、作り手のみずみずしい感性がより直接的に伝わるようにと水盤の上に作品を浮かべた

シンプルな中に大胆な手法や緻密な計算による色表現を取り入れたルーシー・リィー。その水脈を受け継いで、静かで抽象的な造形に独特な自然観を投影するジェニファー・リー。ろくろを使い、倒木や流木からその命を取り出すように制作するエルンスト・ガンペール。いずれも生命体のような有機的なフォルムが特徴だ。
三者三様、それぞれに独創的で素晴らしいのだが、やはり特筆すべきは現代陶磁器の流れに大きな影響を与えたルーシー・リィーだろう。ウィーンに生まれ育ったユダヤ人である彼女は、グスタフ・クリムトらによってウィーン分離派の芸術運動がおこされた時代、モダンデザインの道を切り開いた芸術の息吹を肌で感じていた。
(写真上)ルーシーのボール(1975年)。独特なフォルムは、元恋人でノーベル賞物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーの「自然の物質は分子レベルでは波のようなゆらぎを持っている」という理論にインスパイアされたともいわれる (写真下)ルーシーのボタン(1940年代)。絶妙な色と形が特徴的
36歳のときにナチスの迫害を逃れてロンドンに移住、陶器づくりを続けるが、東洋の様式を色濃く映したオーセンティックな陶芸とは趣を異にした彼女の作品は、簡単には受け入れられず、戦中戦後はボタン作りで生計を立てていた。ボタン作りを通して色をコントロールする術を身につけたルーシーは、緻密な計算によって次々と美しい色や形状のうつわを作っていくこととなる。
そのものづくりに三宅一生が出会ったのが今から二十数年前。ロンドンの書店で偶然手にとった陶磁器の本に掲載されていたルーシーの作品に心を動かされた彼は、さっそくルーシーさんの制作スタジオ兼自宅を訪ねた。彼女の人柄と作品の数々に触れて、「つくる、とはこういうものだ」と直観して心も身体もリフレッシュし、勇気づけられたという。
地球の命を感じさせる土や木を原料に、時に宇宙を思わせる表情や力を湛え、私たちの想像力をかきたてる作品たち。あなたも深淵なるうつわの世界に浸り、その生命感を味わってみては?
(写真左)ジェニファー・リーは、古代文明におけるうつわの形にも影響を受け、手びねりで形作る。着色には釉薬を使わず、さまざまな金属酸化物を土に練り込むことで色を入れる (写真右)エルンスト・ガンペールは「木に従う」をモットーに、木の塊に宿る本質的なフォルムをろくろで削り出す。それが乾燥する過程で自然に変形していく
photo / hiroshi iwasaki (STASH)
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「U-Tsu-Wa/うつわ
― ルーシー・リィー、ジェニファー・リー、エルンスト・ガンペール」展
会期:2009年2月13日(金)〜5月10日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT
時間:11:00〜20:00(入場は19:30まで)
休日:火曜日(5月5日は開館)
入場料:一般¥1,000、大学生¥800、中高生¥500、小学生以下無料
詳しくはこちらから
(写真)ルーシー・リィー コーヒーセット(1966年)
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