水に囲まれた起伏ある美しいランドスケープに“クオリティオブライフ思想”がクロスし、ヒューマンでリベラルな人々が集う街、サンフランシスコ。そこでは、アメリカ開拓者たちの望みに応えてリーバイスが生まれ、ヒッピー文化が興って「ラブ&ピース」のメッセージを世界へと発信し、伝説的政治家ハーヴェイ・ミルクがゲイをはじめ社会的弱者の権利活動を展開した。そんな自由で進歩的な思想を持つパイオニアの街に、良いアートが生まれないわけがない。サンフランシスコアートのHI&LOWを巡ってみよう。
(写真上)グラフィティアーティスト、バリー・マッギーの作品
サンフランシスコアートの本拠地、サウス・オブ・マーケット地区

ダウンタウンの中心地、サウス・オブ・マーケット(SOMA)。コンテンポラリーアート専門の「ヤーバ・ブエナ芸術センター(Yerba Buena Center for the Arts)」の緑と建築美に溢れるヤーバ・ブエナ・ガーデンに見られるように、市民のオアシスとなっているエリア。そのSOMAエリアの中でも、建築家マリオボッタが設計した「サンフランシスコ近代美術館(SFMoMA)」はランドマーク的な存在だ。
エントランス空間自体がすでに光のアート。白黒格子のタイルに、縞模様の円柱はブティックホテルを思わせる。アンリ・マティス、ルネ・マルグリット、フリーダ・カーロの名作から、ルイーズ・ブルジョアのスパイダーなど質の高いコレクションを誇り、マシュー・バーニーなどのメディアアートをアメリカでいち早く所有したことでも知られる。特に写真作品は、アンセル・アダムス、アンリ・カルティエ=ブレッソンなどSFMoMAが願ったコレクションが見られるなど、まさにアメリカンモダンアートの宝庫と言える。
ケーブルカーでノースビーチの高台へ。サンフランシスコ美術大学周辺
ジョン・レノンとオノ・ヨーコのあの伝説的な写真を撮ったアニー・リーボヴィッツも卒業した「サンフランシスコ美術大学」を散策しながら、若手アーティストが集う「ディエゴ・リベラ博物館(Diego Rivera Museum)」へ。社会主義派の壁画で有名なフリーダ・カーロの夫、ディエゴの壁画はアールデコ様式の「Coit Tower」にも、歴史を表す傑作が見られる。ここからはまさにサンフランシスコのパノラマが広がっている。
近くには、ビートニク詩人が集ったことで有名な「Vesuvio Cafe」やアレン・ギンズバーグの詩集を出版して有名になったブックストア「シティライツ(City Lights)」があり、スコット・マッケンジーの音楽が聴こえてきそう。森山大道のシャッターをきらせた作家ジャック・ケルアックなど既成概念にとらわれない芸術家たちが生んだ“ビート・ジェネレーション”はアメリカの文学界で異彩を放ったインテリ集団。西海岸のサイケデリック・ミュージックにその影響が強く見られる。ジャニス・ジョップリンにグレートフル・デッド、今は亡き先人達……60年代のアッシュベリーストリートが今のサンフランシスコの健康的な精神を育んだのだ。
グラフィティ&DIYアートの発祥地、ミッション地区
若いアーティストが好んで住み、小さい実験的なギャラリーが集まるエリア。グラフィティ・壁画の街とも呼ばれ、古着屋、カフェ、レコード屋が点在する。ラテンの雰囲気漂うカラフルな地域にはトミー・ゲレロのサウンドがよく似合う。
「スケートボードの神様」にしてミュージシャンのトミー・ゲレロは、80年代にサンフランシスコカルチャーをリードしてきたバイブル的存在。彼のCDジャケットを手がけたバリー・マッギーは、“ツイスト”の名で世界を騒然とさせたグラフィティアーティストだ。ストリートスタイルを考案したジョー・ジャクソン、マーガレット・ギルガレン、クリス・ヨハンソン、マーク・ゴンザレスなどと共にこれまでのアートの概念を変えてしまうほど、90年代に最も刺激的なカルチャー・ムーブメントを巻き起こし、あらゆる業界に大きな影響を与えた。そんなグラフィティを鑑賞しながらミッションを歩こう。
そのほか、レンゾ・ピアノが建築した90%以上がリサイクル素材で作られた世界で最もエコな博物館、カリフォルニア科学アカデミー(California Academy of Sciences)は2009年にオープンしたばかり。愛すべき街、サンフランシスコ。青いカリフォルニアの空の下、ヨーロッパの雰囲気が漂うこの街には、常に新しい風が吹いている。
report by Noriko Honma(Legends Press)
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