その人の大きな身体は、地元ではなじみの、様々な薬草で覆われている。心臓の部分には、心臓病に効く薬草が、胃には、胃腸によく効く薬草が生え、太陽の恵みを一身に浴びながら、日々成長を遂げている。身体から採れる薬草は、併設のカフェでハーブティや食事となり、訪れた人々を癒し、その効用を伝え、ハーブをめぐるローカルな輪を広げていく。そして時がくるとまた、ハーブマンは旅に出る。

「メディカル ハーブマン カフェ プロジェクト」通称MHCPは、巨大なひとがたのハーブ園を主役とした、じつにユニークなプロジェクトだ。地域に根付いた医食同源の伝統を、地元の人々と対話を図りながら掘り起こし、薬草を介して自然と人間の関係を考えていく。ガーデニングもカフェ運営の設備もすべてがコンテナに収まるよう設計されているため、移動は容易。今回、この規模では初となる試みが、新潟の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」で実現されることになった。
ちょうど新潟での作業を終えて帰京したばかりの、アースケイプ代表の団塚栄喜さんにお話を伺った。環境にあわせて進めるプロジェクトは、始めれば簡単ではなく、植木鉢代わりに使うリサイクルの空き缶が炎天下で高熱となるため、急遽土を堀って、直に植物を植えるなど変更が多発していた。
(左写真)ハーブマン登場予定地。カフェ本体となるコンテナの中にはハーブが
「地元の人に耕し方や植え方を伝授していただきました。どんな場面でも臨機応変に対応できる形にしたいんです。日本中を転々と旅をしていくハーブマンが、各地で得たノウハウを蓄積して、成長していってほしい。今回は最後に、空き缶に植物を入れて、みなさんに持って帰っていただく予定です」。
現地の知恵を借り、廃材をリサイクルする考えは、プロジェクトのベースだという。そもそもこの企画を立ち上げたきっかけが、9.11をはさむ2001年に団塚さんが携わった、パキスタンの子供達のためのプレイグラウンドづくりだった。
「最初に希望されていた近代的な遊具がどこか環境にそぐわなくて、地元にある素材と技術を使い、壊れても簡単に直せるようなものをつくろうと考えたんです」。
地元のバザールで材料や工法を調べ、工夫の末、流木やロープ、古タイヤ等でつくった遊び場が大好評。それまで野山を駆け回っていた子供達が、身体で学べる遊具と出会い、驚喜した。技術を伝授した協力者の職人が、その後パキスタン唯一のプレイグラウンド職人として活躍するまでにもなった。
「子供達の喜びをダイレクトに感じられて、人の気持ちを動かす、ものづくりの原点に触れたような気がします。本職のランドスケープデザインも、公共空間を変えることで人々が楽しんでくれる。既成概念のない、子供の目線で物事を考えるようになりましたね」。
(右写真)アースケイプ代表の団塚栄喜さん
環境と同時に、身体を中味から変えていこうというハーブマンの発想も、パキスタンで体調を崩した際、地元の人が煎じてくれた薬の効能に驚いたことや、帰国後の疲労困憊した日々の体験が発端となった。
10年越しの夢が実ったMHCPは、収益を発展途上国のプレイグラウンドづくりに投じる、循環型の活動体としてスタートさせた。今後は基金の財団法人化を目指し、カフェだけでなく、音楽やプロダクト、出版制作にも活動を広げていきたいという。環境問題が深刻化する今、自然との共生を促すハーブマンは、生命のサイクルを体現するシンボルであり、エコブームの中で、ありそうでなかった明快なメッセージを放っている。今後、ハーブマンが世界旅行に出る日も近いだろう。
「できるだけ大勢の方々に関わってもらえるよう、展開していきたいと思っています。ハーブマンを通じて身体や気持ちが変わる人が増えれば、いろいろなことが変わっていくでしょう。ただの環境デザインでなく、そこに人が関わらないと見えてこない世界があると思うんです」。
ハーブマンが運ぶメッセージを、まずはこの夏、新潟・越後妻有の会場で受け取ってみよう。
(左写真)パキスタンのプレイグラウンド
(photo in earthscape / shiori kawamoto, text / noriko miyamura)
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Medical Harbman Cafe Project
in 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009
会期:2009年7月26日(日)〜9月13日(日)
場所:旧東川小学校 校庭 新潟県十日町市松之山藤倉192
※ハーブコスメブランド「キャロル プリースト」や、楽しく積極的にエコを実践する「ハードエコ」とのコラボによる会期中イベントやワークショップなど、詳しくはこちらから
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009
開催地:越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)760平方キロメートル
料金:パスポート 一般 前売¥3,000、当日¥3,500
アクセス:<電車>東京駅から上越新幹線 越後湯沢駅 0ほくほく線/1時間50分、<車>東京から関越自動車道 石打IC〜国道353号/約3時間
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