ある晴れた日、国も宗教もさまざまな人々が集まり、食卓を取り囲む様子が鮮やかな色彩で描かれている。韓国出身、NY拠点の若手作家、ヤンミー・キョンの版画作品だ。世界平和をテーマに、人種や国家、宗教を越えた風景をペインティング、シルクスクリーン、彫刻等で表現する彼女の個展「木のあるところ、葉山の場合」が葉山の「habitable(ハビテーブル)」で、3月6日までの金・土曜に開催されている。

展示の舞台は、葉山在住一家の居間(庭を含む)。「habitableはギャラリーではなく、“居間で住むに適するモノコトの景色をみるプロジェクト”です」とはハビテーブルの住人さん。その第一弾として、住むに適したアートとは何か/アートによって変化する住まいと人との関係とは何かを探るべく、三軒茶屋のギャラリー「waitingroom(ウェイティングルーム)」とのコラボレーションによって実現したのが今回の企画展だ。
(左写真)冒頭に触れたヤンミー・キョン「Middagesse whoopie」。waitingroomでこの作品に出会ったハビテーブルの住人は、habitableでやりたいことにぴったりと第一弾にヤンミー・キョンの個展を行うことに決めたという Middagesse whoopie, 2008年, シルクスクリーンプリント, 45x60cm
昨年9月にヤンミー・キョンの個展を行ったwaitingroomの芦川朋子さんはこう語る。「waitingroomでは、“都会の一角に小さなオアシスを作る”ことが展示の大切なコンセプトでしたが、葉山のhabitableでは“自然と作品の同居”に重要なコンセプトがあると思います。観客の反応を見ると、東京での展示の際には“小さなオアシスに出会い、癒される”だったのが、葉山では“作品と一緒に戯れる”という形に変化し、受け手の反応もより能動的になったように思います」。帰宅中の幼稚園児たちが先生と一緒に「なにあれ~!?」と作品に駆け寄り興味深そうに見つめるというシーンもhabitableならではだろう。
ここで、葉山という土地柄にふれないわけにはいかない。葉山には、故郷の愛媛に似た場所と物件を探しているうちに流れついたという住人さん。habitableをはじめたのは、「この時代における風潮や新たな友人関係、そして、複合的な意味で想像以上に創造的だった“場”がきっかけであることは間違いないですね」と語る。
habitable周辺には、映画館・花屋・カフェが一体化したCINEMA AMIGO(シネマ アミーゴ)、フードコーディネーターの根本きこさん夫妻によるカフェcoya(コヤ)、ビーチハウスUMIGOYA から生まれた通年営業のカフェUMIGOYA Style & Cafe 、チーズケーキ店Como'n bebe(コモンベベ)などなど、それぞれが主体を持ちながらフレキシブルにカルチャー発信をする魅力的なスポットが点在している。
(右写真)habitableの居間
さまざまなクリエイターも集まるというこの地に生まれ育ち、いい触媒になればと昨年8月にCINEMA AMIGOをオープンした長島源さんは、葉山の好きなところを「血のつながっていない家族がたくさんいるかんじ」と表現する。これは地元の人だけに限らず、外から訪れた人にも心地よく感じられるムードとして確かにある。この地には独特のコミュニティがありながら、それは閉鎖的で排他的なものではなく、他者を受け入れる懐の深さ、つまり平和のセンスが豊かにあるのだ。
寛容で明るく朗らかな空気の中、ヤンミー・キョンの描くシンプルでストレートな理想郷を眺めていると、この中の登場人物になりたい――そんなことが素直に思われてくる。habitableのオープニングでは、ご近所のパン工房、ピッツェリア、パティスリーが供するスペシャルフードや持ち寄りのドリンクがテーブルに並べられ、都内ほか遠方から訪れた友人たち、通りがかりの人々も吸い寄せられるように集った。そしてふと気づけば、「Middagesse whoopie」さながらの光景が目の前に現れていた。
こうして人々の心を動かすものがこの居間から広がっていくのかと思うと、これからが楽しみでたまらない。
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ヤンミー・キョン個展 木のあるところ、葉山の場合
会期:2010年2月6日(土)〜3月6日(土)
時間:期間中の金・土の11:00〜17:00
会場:habitable
アクセス:JR線 逗子駅東口より車で15分。バス停一色小学校前から徒歩5分
*2010年4月24日(土)〜5月16日(日)には第18回葉山芸術祭 HAYAMA ART & MUSIC FESTIVAL 2010が開催される。habitableやCINEMA AMIGOも参加を計画中。
(右写真)Macedonia, 2008年, シルクスクリーンプリント, 45x60cm
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