サイト内検索

Top > culture > art

アボリジニアート

アボリジニアート

アボリジニアートをご存知だろうか。5万年とも6万年ともいわれる長い年月の中で、オーストラリアの広大な大地を自由自在に移動しながら狩猟採集生活をしてきた先住民、アボリジニ。彼らの描く絵は、異なる文化背景を持つ人々をも魅了してきた。現在では、世界各国の主要な美術館には、アボリジニアートが第一級のファインアートとして所蔵、展示されている。日本でも、2008年に天才画家と称されたエミリー・ウングワレーの大規模な展覧会が大阪の国立国際美術館と東京の国立新美術館で開催され、多くの動員を記録して話題となったことは、記憶に新しい。

アボリジニアート
ドクター・ジョージ「ティンガリ」(60cm×60cm)

そんなアボリジニアートの素晴らしさを日本に紹介する展覧会が、6月19日から27日まで代々木上原のギャラリーで開催される。そこで、企画・運営を行っている日本初のアボリジニアートプロデューサーである内田真弓さんに、アボリジニとの出会い、彼らのアート、そして彼ら自身の魅力について伺った。

文字を持たない彼らは、我々とは全く違うコミュニケーション手段を守ってきた。自分たちの先祖や、世界を構成するものたち(動物、昆虫、魚、石、太陽、月、雲など)が持つそれぞれの物語、世界の成り立ちとそれに関わる自分たちの役割についての物語を“ドリーミング”と呼び、独自のタッチで絵のようにして語り継いできたのだ。いわばそれは、次の世代に歴史や文化、思想や精神を伝承するための“ビジュアルな言語”。長きに渡り、彼らの“言語”はその美しさと独自性からプリミティブアートとして博物館に所蔵されていた。

ところが1971年、それが砂漠のアートとして紹介され、初めてアクリル絵の具でキャンバスに描かれるようになってからというもの、現代美術界は大きな衝撃を受け続けている。描かれていることが何を意味しているのか、アボリジニではない人々には解読するのは難しいが、それでも魂を根幹から揺さぶる何かを感じ取った人々が、その素晴らしさに熱狂しているのだ。

アボリジニーアート
今回のアボリジニアート展のなかでも目玉の最新作。アーティストのモーリーン・ハドソンと内田真弓さん。(photo / toru hiraiwa)

日本初のアボリジニアートプロデューサーである内田真弓さんも、衝撃的な出会いを経験した一人だ。オーストラリアで出会ったアボリジニアートに導かれるように、現在の仕事を選んだ彼女。キャビンアテンダントからアボリジニの世界に飛び込んだというドラマティックな経歴を持つ。

「早いうちから経済的自立を求めていたため、キャビンアテンダントという仕事はとても理想的でした。でも、6年経つと、物に溢れた暮らしにも違和感を持つように。花形の職業につき、欲しいものはだいたい手に入り、羨望の眼差しで観られ、ちやほやもされる。でも、どこか満たされない自分に気づいたんです。世間の目に映る自分のイメージを気にして生きるよりも、自分が本当に満たされることをやって生きていきたい。会社ではなく自分の名前で勝負したいと思うように。そこで、まずはインターンシッププログラムに参加し、海外で日本語教師を行うことに決めました」

試験に合格し、派遣されたのがオーストラリア。順調にプログラムをこなし、帰国を間近に控えた1994年ある日、出会ってしまったのだ。

「雨宿りで入ったギャラリーで、ある1枚の絵を見て、全身にカミナリを受けたように衝撃を受けました。描かれている内容は、ちんぷんかんぷん。暗号のようでしたが懐かしさと、何か大きなものに抱かれている安心感をも覚えたんです。これまでの人生に登場してこなかった、生まれて始めての体験でした。当時はアボリジニアートに関する知識も何もないですから、とにかくもっと知りたいと思いました」

アボリジニアート
(左から)グロリア・ぺチャラ「ブッシュ・メディスン」(120cm×60cm)、エミリー・プーラ「ボディ・ペイント」(40cm×40cm)

それから一時帰国を経て、そのギャラリーのオーナーの元でアボリジニアートを学ぶうち、アボリジニアートの故郷すなわちノーザンテリトリーに足繁く通うようになる。

「家族にもずいぶん反対されました。でも、これだと思えるものに出会ったんです。それまでしていた仕事は、自分じゃなくてもいいように思えました。でも、私はもっと自分自身でいたかったんです。それが、アボリジニといると、居心地の良さを覚えたんです。心が満たされる瞬間も知りました。これは大きな発見でしたね。物質的な不自由さのない生活を送っていましたが、実際、モノで幸せは計れない。彼らは、6つの道具で5万年もの時を生き抜いてきました。
シンプルに暮らし、大地の声を聞き、大地の表情を知る。おなかがすくと、2時間もかけて1本の棒で蜜アリを採るんです。

まさに、大地、自然との調和を持って生きている人々。テクノロジーに依存する生活の中で、情報とものは豊富にあるから惑わされるのではないかと強く感じるようになりました。今思えば、アボリジニアートだったから、オーストラリアに戻りたいと思ったんですね」 >Vol.2へつづく

1 2

関連キーワード

アボリジニアート

ABORIGINAL ART EXHIBITION 2010
アボリジニアート展
2010年6月19日(土)〜27日(日)
11:00〜19:00 最終日は17:00まで 会期中無休
ギャラリー上原
東京都渋谷区上原1-21-11 BIT代々木上原II 1階
Tel:03-3467-3932

主催 Art Space Land of Dreams 代表 内田真弓
後援 オーストラリア大使館
   オーストラリア政府観光局
   ノーザン・テリトリー政府観光局

>ノーザンテリトリーの情報はカンタス航空「旅のスタイルガイド」で


art 一覧


おすすめ記事