本州、四国、九州に囲まれた瀬戸内海。そこは湖のように静かな海をはじめ豊かな自然を誇る景勝地であり、古代から交通の大動脈として重要な役割を果たしてきた航路でもある。こうした自然と人々の営みの中で固有の文化を育んできた7つの島々を舞台に今、瀬戸内国際芸術祭2010「アートと海を巡る百日間の冒険」が開催されている。

香川県・高松港から船をつかってアクセスできる直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島で展開されているこの芸術祭は2010年を第1回として、3年ごとの開催を目指す長期的なプロジェクト。香川県知事の真鍋武紀氏、ベネッセホールディングス取締役会長の福武總一郎氏、アートディレクターの北川フラム氏が実行委員会の中核をなし、第1回目となる今回は、18の国と地域から75組のアーティスト、プロジェクト、16のイベントが参加している。
(左写真)大竹伸朗 graf 直島銭湯「I ♥ 湯」 photo 渡邉修
続いて多数の作品が設置されているのは、縄文時代の遺跡が点在し、棚田が広がる湧き水豊かな「豊島(てしま)」。かつての産業廃棄物不法投棄問題は日本中の産廃問題への関心を高め、今や解決に大きく近づいている。盲目の女性旅芸人を描いた木下晋「101歳の沈黙/100歳の手ほか」は古民家で展示されることによりその魅力を増している。森の中の池に佇む森万里子「トムナフーリ」は超新星が爆発すると光を放つので夜のツアー(未定)に参加したい。神社に設置された青木野枝「空の粒子/唐櫃」は、棚田を見渡しながら彫刻のなかで耳をすますと、微かに水が流れる音が響く。近所に住む女性に話しを聞くと、毎日通ってその音を楽しんでいるという。
豊島からアクセスできる「犬島」には、近代化産業の遺産である精錬所の煙突がそびえ立ち、現在は60人ほどが住む。2008年には精錬所をリノベーションした犬島アートプロジェクト「精錬所」がオープン。また、作品と風景を同時に楽しめる「犬島家プロジェクト」も展開されている。
(右写真)青木野枝「空の粒子/唐櫃」 photo 中村脩
女木島の北に位置する「男木島(おぎじま)」は平地がほとんどなく、急斜面に密集する民家の間を縫うように細い坂道を通るのがユニーク。港にはジャウメ・プレンサによる半透明の空間「男木島の魂(男木交流館)」が建てられ、さまざまな言語の文字が、日中はその影を地面に落とし、夜は空に向かって投射する。
……とここでは紹介しきれないほどの非常に多彩な島々と作品の数々。体験してこそ楽しめるその魅力は、なんといっても島ごとの町並みとそれを取り巻く人々、さらにそれらをつなぐアートのあり方。アートは、人が自然や他者に関わるための“技術”となるのだ。訪れる人は島々独自の色や空気を感じながら、点在する作品を宝探しのように巡るうち、忘れかけていた大切なものを見つけるだろう。一方でグローバル化の進む今、島々の人口は減少し、高齢化が進み、地域の活力の低下によって島の固有性はかつてより失われつつあるという。ここで生まれる交流の中で、島々も失いかけていたものを取り戻すに違いない。
(左写真)鈴木康広「ファスナーの船」 photo 中村脩
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瀬戸内国際芸術祭2010「アートと海を巡る百日間の冒険」
開催期間:2010年7月19日(海の日)〜10月31日(日)
会場:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港周辺
※「豊島美術館」は2010年10月17日開館予定
※建物や作品によっては、鑑賞可能な時間が短く限定されている場合があり、休島日もあるので計画時に最新情報の確認を。重要な交通手段である船についても、特に最終便を逃すと翌朝まで交通手段がなくなってしまうので要注意
※公式ガイドブックが便利
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