book人脈は筋肉と同じ。鍛えれば鍛えるほど強くなる。

バブル期からしばらく、異業種交流会なるものが盛んに開かれていたことがあった。当時会社で広報部にいた私は、人脈を広げたくて何回か顔を出したことがある。大規模だと数百人単位、小規模でも数十人単位で開かれる交流会は、大きな名札をつけてただひたすらに名刺を交換する会合だった。相手の名札を見て、「この人は」と思えば自己紹介して名刺を交換し、二言三言雑談してまたつぎの人のところに行く。無名の小企業にいた私のところになど誰もやってきてくれないから、ひたすら自分から声をかけるしかない。

ぐったり疲れて帰る道々、もらった100枚ほどの名刺をめくりながら、ふとどの人の顔も思い出せないことに気づいて愕然とした。見ていたのは名札の会社名と肩書きだけ。どんな人物なのか、何をしている人なのかもわからないままもらってくる名刺にいったい何の意味があるのだろう?それ以後、話もできないような交流会に顔を出すのをやめた。『一生モノの人脈力』のなかで、著者のキース・フェラッジはこんな名言を書いている。「私にとって、人脈づくりはひとつの生き方であり、世界観なのだ」つづいてこうも書く。

「人づきあいを、他人を操って目的を遂げるための手段ではなく、ひとつの生き方として見ることが大切なのだ」

人脈づくりのために参加した異業種交流会で、なぜあんなに違和感と徒労感に襲われたのかが、この言葉を読んでやっとわかった。自分にとって役立つ(つまりは実利をもたらしてくれる)人物だけとコネをつけることを、著者は人脈づくりとは呼ばない。ましてや名刺に書かれた肩書きとだけなかよくしたいと考えていたら、人脈なんて100年待っても築けないだろう。

一生モノの人脈力

肩書きや知名度に関係なく、人間として知り合う。
自分が相手にとって何ができるか、をまず考える。
自分をさらけだして誠意をもって話す。
自分が持っている人脈を、人に惜しげなく紹介する。
本当に役立つ人脈を持つためには、こういうことができなくては、と著者はいう。
どんな仕事をするにも人間関係が重要だ、と誰もがいう。ビジネスの成功のカギを握るのは人脈だ、と成功した人たちはみな口にする。

だが、「人脈づくりこそ人生だ」と言い切る著者のように、人に対して寛容で、人を尊重し、誠意をもって人間関係を築いている人が、いったい何人いるだろう? 異業種交流会が盛んだった時代から15年ほどたち、企業名や肩書きの価値や意味も大きく変わった。「人脈こそが財産」とは、集めた名刺の数ではなく、自分がひと肌脱げる人、そして自分のためにひと肌脱いでくれる人の数を意味するようになっている。

さて、あなたの人脈は? (text / motoko jitukawa )

『一生モノの人脈力』
キース・フェラッジ  タール・ラズ著
東京創元社  \1,890(税込)

バックナンバーを見る

このページのトップへ戻る

バックナンバー

バックナンバー一覧


サイト内検索