読むだけでおいしい本『きらめくジャンクフード』

ときどき……というのは一年に4回くらいだが、コンビニで売っている一個100円のでっかいシュークリームが食べたくて食べたくて矢も盾もたまらなくなり、夜中の12時だというのにサイフと鍵を引っつかんで、サンダルでぺたぺた引きずりながら、駅前のコンビニまで急ぐことがある。行きつけのファミリーマートに飛び込み、冷蔵の陳列棚まで一目散。売り切れていたりしようものならパニックになる。なぜか無駄に駆け足で線路を渡ってセブンイレブンに。そこにもなかったら、隣の駅まで15分マラソンしてローソンへ。

「何も夜中にシュークリームなんか食べなくてはいいだろう。てきめんに太るし、胃にもたれるし、ロクなことはないよ」――既婚2女あり、職業モノカキのまっとうな社会人が言いそうなそんな声は、そのとき私の耳にいっさい聞こえてこない。頭のなかにあるのは、ふにゃふにゃの薄い生地にがぶりとかみついて、中からとろりとたれてくる甘ったるいカスタードを舌ですくっているシーンだけ。シュークリームが食べたい。その欲望は、もうもどかしいというのか、悩ましいというのか。こういうときだ。「もしかして私は、ジャンクフードにどっさり入っている化学物質の中毒になっているのではないか」という恐怖と後ろめたさに襲われるのは。

私のような「矢も盾もたまらなくなってジャンクフードを買いに走った」経験をもつジャンクフード中毒者、もしくはその予備軍を小躍りさせてくれる本が「きらめくジャンクフード」だ。もしあなたが、コンビニでカゴのなかにふと気づくとお菓子を入れていたり、新しい飲料が発売されたらさっそく買い求めたり、お祭りの屋台のやきそばを一年に一回食べないと落ち着かなかったり、ハンバーガーはどのチェーンのものがおいしいかにくわしかったりする人だったら、この本のページをめくるごとに身もだえするはずである。そうそう、ジャンクフードってほんとおいしいのよね! これを食べないで何が人生よっ! と行列のできるたこやき屋に走るかもしれない。

『きらめくジャンクフード』

反対に、健康オタクでダイエットが趣味で、マクドナルドには待ち合わせ以外で入ったことがない、という人にとっても、おいしくて楽しい本だ。なぜなら、中毒になりそうなほどおいしそうで、しかもヘルシーでなつかしいジャンクフードも満載だから。アメリカで長く暮らしていた著者が勧めてくれる、手作りのパイやクッキーやピッツァのレシピは、太りたくないけれど、おいしいジャンクフードが食べたい、というワガママな人(とくに女の子)にとって天の恵み。読んだその日から、食べる快楽ときれいになりたい欲望との両立がはかれる……はずだ。

さあてと、いまからオムライスを作って、ランチにしようっと。ケチャップでハートマークなんか書いちゃったりして。食後に、いちごゼリーも食べちゃおう。 そう、この本とジャンクフードは、社会人としての冷静さを失わせる魅力というか魔力を持っている。

『きらめくジャンクフード』
野中 柊著 文藝春秋
¥1,300(税込)

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