小学校高学年まで、なりたい職業のNo.1は「本屋さん」だった。ちなみにNo.2は「レストラン経営」である。そこでこの2つの職業をあわせて「資金があれば、ブックカフェとかブックバーとかやってみたいな」といまでもときどき夢見る。夢見るだけでなく、図面を描いて、資金のそろばんをはじいたりする。途中で、甘いことを考えている自分に苦笑して、やっぱり夢にしておこうと行動には移していないのだけれど。
『配達あかずきん』は書店で働く杏子さんが主人公。ファッションビルの6階にある成風堂書店で、杏子さんは取り次ぎから送られてきた新刊を並べ(売れそうな本、売れてほしい本、地味で入荷冊数は少ないけれど思い入れのある本、など並べ方を工夫するところがプロの書店人だ)、お客さんからの「女の子がたくさん出てきてかなしい話」なんていう雲をつかむようなヒントをもとに本を探したりする。
本屋さんの仕事は地味で、ミステリーの舞台なんかにならないだろう、と実はこの本を開くまでは思っていた。本を買う動機は、本が読みたいからで、そこに犯罪やドラマがからむ余地が見出せなかったのだ。

ところが書店人を主人公に、駅前にあるビルに入っているごくふつうの書店を舞台にした5篇は、書店がスリリングな世界であることに気づかせてくれた。表題になっている『配達あかずきん』は、書店でアルバイトをしているちょっとぼんやりした女の子が、お得意さまが定期購読している雑誌を届ける途中で出会った事故に端を発した美容院の業務妨害事件。書店のだいじな仕事のひとつに配達があること。お得意さまには表紙に汚れなどもちろんなく、ページも整った美装の雑誌をわざわざ書店の人が運んで届けること。犯罪の謎解きを楽しみながら、書店のそういうていねいな仕事について、読者はあらためて気づかされるはず。
若者だけでなく、どの世代においても本離れが進んでいるといわれてひさしい。でも本を愛している人、そして読書に楽しみを見出している人はまだまだ大勢いる。そしてそういう人たちの精神的な悦びを支えているのが、書店人なのだ。
一気に読み終わって思った。 やっぱりブックカフェをやってみたいな、とね。
(text / motoko jitukawa)
『配達あかずきん』
大崎梢著
東京創元社 \1,575(税込)
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