「ババグーリ」は、東京・清澄公園そばにあるヨーガン レールの本社1階にあるお店だ。もとは撮影スタジオだったという建物を改造したそうで、天井がとても高い。ひろびろとした空間に並べられているのは、思わずさわってみたくなる素材で仕立てられた服、竹細工の椅子や籠、陶器、手紡ぎ・手織り・草木染めの手ぬぐいやリネン類など。1点ずつ、眺めて、さわって、椅子には座ったりしながら楽しんだ。熟考の末買い求めたのは、インドでつくられたラグ、ラオス製の手ぬぐい、それと深緑が吸い込まれそうな美しい小鉢。どれもつくった人のぬくもりが感じられる味わいが気に入った。
帰宅して、さっそくラグを広げた上で読んだのがこの本だ。
「ババグーリ」とは、インドのグジャラート地方ラタンプールというところでとれる瑪瑙(めのう)のこと。「石を拾うのが趣味」というヨーガンさんは、わざわざインド奥地まで行き、大興奮で美しい瑪瑙を拾ってきたのだとか。お店にもあったその瑪瑙は、一つひとつ色も形も質感もちがって、どれもはっとするほど美しい。透明感のある深い朱色に白と黒の縞が入った石。青磁のような緑がかった灰色の石。手に取って眺めていると、不思議なことに敬虔な気持ちになってくる。素直に「自然は偉大だ」と思える。
ヨーガンさんは石を眺めて、「自然は、完璧な美をすでにそこに用意しているのに、人間が何を今さら創造できるだろうか、と自分を卑下するような気持ちにさえ」なったのだそうだ。そこで「自然がこのように美しいものを用意しているのだから、私は飾りもののような不要なものは作りたくない。自然への尊敬をこめて、環境を汚さない、土に還る素材で、ていねいな手仕事をされた服や暮らしの道具など、自分にとって必要不可欠なものを作りたい」と考えて、「ババグーリ」というブランドを立ち上げた。
この本には、世界各地を旅してヨーガンさんが出会い、現地の人たちとともに手仕事でつくって「ババグーリ」で販売しているものが紹介されている。インドの布地、南部鉄のテープカッター、大分の竹細工、インドネシアの木の椅子、上海の藍染めの布、沖縄の手吹きガラス……。ヨーガンさんが語る、それらをつくる人との出会いの話も楽しいが、一緒につくっている人たちや、つくられたものを愛している人たちが寄稿している文章がまたいい。そしてまた、ヨーガンさん自身のライフスタイルと、ヨーガン レールという会社のあり方にもとても魅力を感じる。なんといってもうらやましいのは、社員の方たちが、手仕事でつくられたテーブルや椅子が並んでいる社員食堂で、契約農家で収穫された野菜を使ったおいしい食事を毎昼食べている、ということ。仕事も、プライベートも、姿勢が一貫しているところがすばらしい。

ものをつくること。ものを使うこと。使っているものをいとおしむこと。そんな生活を楽しむこと――生きていくことの基本を、この本は教えてくれる。
(text / motoko jitukawa)
『ヨーガン レールとババグーリを探しにいく』
ヨーガン レールほか
PHP研究所・¥1,680(税込)
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