「それはちがう」と思ったとき、はっきり大きな声で「ちがう!」と言えるか?
不正に苦しむ人を見たとき、手を差し伸べる勇気があるか?
なんのメリットがなくても、自分が正しいと信じたことを貫き通せるか?
本書に登場する12人の女性たちは、誰もがその問いかけに「YES!」と答えて、そのとおりのことを実行してきた人たちだ。ノーベル平和賞は偉大な賞だし、それを受賞した彼女たちは全員が「成功した人」と言えるかもしれない。だが、最初から成功していた人などもちろん一人もいない。高い教育を受け、資質に恵まれた人たちはいるけれど、それを活かしはしても、利用してはいない。
たとえば、グアテマラの山岳地帯にある小さな村で生まれ育ったリゴベルタ・メンチュウは、先住民であるインディオのために激しい差別にあい、身内をつぎつぎ政府軍に殺された怒りと悲しみから立ち上がった。だが、ゲリラを組織化して軍と政府に銃で立ち向かう道は選択しなかった。インディオのさまざまな部族の言葉を学び、かつ意思の疎通を図るために統一言語としてスペイン語を教えることから、彼女の平和活動は始まった。官憲に追われながらも、プランテーションを渡り歩いて先住民たちに読み書きや計算を教え、自分たちが差別されていることの意味を説いてまわった。それは根気がいるし、ときには生命が危険にさらされる活動だ。だが「インディオどもが読み書きを覚えたら、いったい誰が俺のコーヒーを摘むんだ」というグアテマラの上流階級の人たちの偏見に屈せず、リゴベルタは先住民の人権を守る戦いを地道に続けている。
マザー・テレサは自身の活動が論争や権力闘争に巻き込まれないように、細心の注意を払っていたそうだ。とくに妊娠中絶反対に対する批判についてはこう答えていたという。
「人が何を言うかなど気にしてはいけません。すべてを笑顔で受け止め、あなたがするべきことをし、あなたの道を歩きつづければいいのです」
またアウンサンスーチーはこう言っている。
「人生をまっとうするには、他者の求めに応じて責任を負う勇気を持たねばなりません……人間は進んでこの責任を引き受ける必要があるのです」

平和のために何かやる、などというと、「政治にかかわるのはめんどうだ」とか「私はそんな立派な人間ではない」といって逃げてしまいたくなる。だが、本書に登場する女性たちが平和のために始めたきっかけはとてもシンプル。「他人のために何かやりたい」と心から願った、それだけだ。ノーベル平和賞というとなんだかすごすぎてしまうけれど、その第一歩は平凡な生活のなかの小さな活動のなかにあるのだ、ということがよくわかる。
(text / motoko jitukawa)
『ピース ウーマン』
アンゲリーカ・U・ロイッター/アンネ・リュッツアー著
松野康子/上浦倫人訳
英治出版 ¥2,520(税込)
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