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世界には、名品を生み出す老舗ブランドがいくつもある。だが、限られた人たちだけが手にすることのできたブランドの場合、知る人ぞ知る存在となることも多い。ロシア生まれの老舗宝飾店マルシャックも、そんなブランドのひとつだ。
魅力は、自然界からインスパイアされた流れるようなライン、意外性溢れるデザイン、エレガントな存在感、そして独特の鮮やかな色使い。自然そのものをモチーフにすることが多く、植物、動物、昆虫など、有機的なアールデコの香りが芳醇だ。ロシア芸術の影響を色濃く反映したエレガントなデザインの数々は、宝飾品という枠を超えて、芸術品の域に達していると言われ、世界の王侯貴族をはじめ、ジャクリーン・ケネディら多くのセレブリティに愛されてきた。宝飾品だけでなく、シガレットケースや室内装飾品などを注文に応じて製造し、これまでに作られてきた数々の逸品は、今もオークションの花形だ。
始まりは、1878年ロマノフ王朝時代のキエフに遡る。創設者は24歳のジョゼフ・マルシャック。繊細な細工のゴールドチェーンを生み出す小さな工房としてスタートしたが、際立った感性と技術でその名を知られるようになり、1917年の革命以前には、ロシア南部で最有力の宝飾店に。だが、革命さなかの1918年にジョゼフが亡くなると、一家はパリへ。息子のアレクサンドルが、父から継承した感性とノウハウを生かしてパリに店を開くとすぐに評判となり、1925年にパリで開催された“アールデコ博”とも呼ばれる装飾美術博覧会では、花を象った作品がグランプリを受賞。その後も、伝統と品格、高い品質を誇るこのブランドは海外でも高い評価を受けてきた。

(写真左) 色石の大胆な組み合わせがマルシャックならではの「Ondee」
ブローチ:プラチナ、イエローゴールド、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、半貴石
そんなマルシャックが2000年、久々に新しいコレクションを発表して注目を集めた。実はこの13年ほど、ブランドは沈黙を守っていたのだが、創業者の孫であり、整形外科医としても成功しているダニエル・マルシャック博士が、再び家業を蘇らせようと奮起。ブランドの哲学とアーティスティックな創造性を受け継ぐ元デザイナー、ベルトラン・ドゥゴミエ氏を呼び戻し、彼にブランドを一任することで、マルシャックの歴史に新たな章が刻まれ始めたのだ。
(写真左)1925年の“アールデコ博”でグランプリを受賞した
「Flower」
ブローチ:プラチナ、ダイヤモンド、オニキス、ルビー、サファイア、エメラルド

新生マルシャックには、伝統的なジュエリーメイキングの手法がしっかりと息づいているが、新しい感覚が融合された。ドゥゴミエ氏のもと、素材の声を聞き、物語性のある作品を生み出すというマルシャック流の発想力を身につけたデザイナーたちが、世界中を旅しながら、さまざまな文化、地球の自然からインスパイアされて作品を作り出す。それぞれのクリエイターの創造性と感性にすべてが委ねられているため、流行を追うだけでは到達できない独自性が花開くのだ。
マルシャックにしかできない“魔法”を可能にしている技術は数多いが、特筆すべきはパート・ド・ヴェールというガラス工芸の技術。色つきガラスを溶かして成形する、日本の七宝焼きに類似した技法で、複雑さと手間を要するため、今では継承者が少ない。そんな伝統技法とともに、マルシャックのジュエリーに希少性を与えているのが、世界で1点、もしくは色違いで5点しか作らないという究極の限定主義。“ジュエリーはパーソナルな存在”というマルシャック哲学の表れでもある。
そして、その哲学はこんなところにも。アーカイブも展示されているサロンは完全予約制。顧客対応にも、1対1で要望にじっくりと耳を傾け、愛され続けるパーソナルな一品を届けたいという信念が貫かれているのである。
(写真右)デザインチームの指揮をとるベルトラン・ドゥゴミエ(中央)と、デザイナーのエリザベス・ジュローム(右)とマリークリスティーヌ・ドゥ・リヴェ(左)
text / june makiguchi
Marchak/マルシャック (仏語・英語)
お問い合わせ先
Emotion France プレスルーム
Tel:03-5469-9060

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