現代のモード界をリードしてきたジバンシィ。今、その伝統にフレッシュな魅力が加わって、大きな話題を集めている。
(写真上)十字架や蹄鉄、鍵といったチャームが付いたネックレス。リカルド自身も家族や知人にもらったチャームをネックレスに沢山つけているのだとか。ジャケットのシルエットの美しさは溜息もの
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世界で最も有名なブランドのひとつジバンシィは、1927年にフランスはボーべ出身のユベール・ジャム・マンセル・タファン・ド・ジバンシィが生み出した。17歳でパリを目指し、ジャック・フィト、ロベール・ピゲ、リュシアン・ルロンらからクチュリエとしての職人技を受け継ぎ、エルザ・スキャパレリのサロンで学んだフランス・モードの継承者だ。
(写真左)バッグにフロッキープリントされたエンブレムは2008年春夏から登場
(写真右)ユベール・ド・ジバンシィ(左)とオードリー・ヘップバーン(右)
1950年代前半には、「20世紀後半の“カジュアル・シック”がファッションの潮流となるとともに、贅沢品の大衆化が進む」と早くから予見し、当時は仮縫いにしか用いられていかなった生成りのコットンを使ったスカートやブラウスを制作するなどして、ファッション界に新風を吹き込んだ。一方で、プレタポルテライン「ジバンシィ・ユニベルシテ」を発表するなど高級路線も維持。
彼が生み出す、自由で斬新な精神を内包したエレガントなファッションは、お洒落に敏感な上流階級の人々や、女優たちを中心に強い支持を得た。ローレン・バコール、グレタ・ガルボ、マレーネ・デートリッヒ、エリザベス・テイラー、そしてジャクリーン・ケネディ・オナシス、グレース王妃…。時代のアイコンたちが顧客として名を連ねているが、誰よりもジバンシィと親密な関係を築いたのは、オードリー・ヘップバーン。それまで、グラマスな脚線美ばかりがもてはやされていたが、華奢でスリムなライン、すらりと伸びたネックラインを強調し、エレガントでありながら少女のような初々しさを感じさせるという新しい美の基準を生み出したのは、この二人に他ならない。1953年の出会い以来、40年にも渡りミューズとしてジバンシィをインスパイアし続けた彼女は、『麗しのサブリナ』『ティファニーで朝食を』『パリの恋人』といった代表作はもちろん、プライベートでもジバンシィの服を愛し、ブランドの名を世界に広く知らしめ、フランスを代表するブランドとしての地位を確立した。
(写真右)オードリー・ヘップバーンの体型を再現したボディをもとに復元したドレス
1995年にユベール・ド・ジバンシィが引退した後は、ジョン・ガリアーノ、アレキサンダー・マックイーンらが、妥協を知らない創設者の精神を引き継いできた。そんなジバンシィの歴史に新たな一ページを刻み込んだのが、リカルド・ティッシ。南イタリアで育ち、ロンドンのセントマーチン美術大学でデザインを学んだ彼は、2004年に発表した自らのコレクションを経て、2005年3月にジバンシィ・ウィメンズ・オートクチュール、プレタポルテ・コレクションのクリエイティブ・ディレクターに就任。2008年3月には、メンズのクリエイティブ・ディレクターにも任命され、ブランドイメージの全てを任される形となった。
彼のデザインの特徴は、ジバンシィのイメージにも共通するモダン・シックと新しいことへの挑戦を恐れない自由な創造性。2008-9年の秋冬プレ・コレクションでは、女流写真家サラ・ムーンの生み出す幻想的な世界観からインスパイアされたダークなロマンティシズムを表現。さらには、ユベール・ド・ジバンシィのアーカイブからインスパイアされたデザインも発表した。2008-9年の秋冬プレタポルテ・コレクションでは、彼が好んで旅してきたラテン・アメリカが持つ宗教色、官能性、誇りへのリスペクトを表現。細長いボトムスに合わせた、たっぷりとしたシルエットのトップスにはレース、フリル、プリーツ、ラッフルなどに宗教的なモチーフが組み合わされ、素材、デザインなど対極同士のミックス、ゴシックの香りを漂わせた。ブランドの伝統を守りながらも、しっかりと自らの個性を映し出したコレクションは、“リカルド・ティッシによるジバンシィ”を業界内外に知らしめ、ベスト・コレクションの呼び声も高い。
(写真上)リカルド・ティッシ
(写真下)サントノーレにオープンしたショップ
リカルド・ワールドが展開しているのはデザインだけではない。「モデルが通り過ぎるのではなく、じっくりと見てもらえるコレクションを」という考えから、ファーストコレクションではプレゼンテーション形式の発表を展開。毎回サプライズが用意された演出を含め、細かいところまで自らがチェック。今年2月にパリのフォーブル・サントノーレにオープンしたメンズ、レディースの新しい複合店にも彼の美学が光り、型破りと呼ばれる才能が遺憾なく発揮されている。母親と8人の姉の中で育ち、女性を知り尽くしたリカルド・ティッシが牽引する新しいジバンシィ。今後も目が離せない。
(text / june makiguchi)
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