ココ・シャネルやイヴ・サンローランのように、デザイナー自身の魅力や生き様が、そのままブランドの魅力と重なることがある。ダイアン・フォン・ファステンバーグも、そんな存在だ。
恵まれた生活環境に甘んじることなく、自らの道を進んで切り開き、大きな成功を手にしたダイアン。彼女の強くしなやかで自由な精神を存分に反映したブランドは、1970年の設立以来ずっと女性たちに勇気を与え続け、自立した女性を象徴するブランドの代表となっている。
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彼女の服作りの哲学は揺ぎない。「30年前は私自身がなりたいと思っていた女性に似合う服をと考えてデザインしてたわ。自信に満ち、自立した働く女性。今はかつての私のような女性たちのために服を作っているの」
こう話すダイアンが生まれたのは、1947年のベルギー。今やアメリカファッションデザイナー協議会の会長として、後進の育成やファッション界の繁栄のため尽力する彼女が、ファッションに憧れるきっかけを作ったのは、若き日に恋人から贈られたエミリオ・プッチのブラウス。とはいえ、彼女がまず選んだのは、ファッション界ではなく、公爵夫人としての人生だ。スイスのジュネーブ大学で経済学を学んでいるときに知り合ったイーゴン・フォン・ファステンバーグ公爵と在学中に結婚し、若くして家庭に入る。
貴族としての生活は、華やかで何不自由ないものであったが、“公爵夫人”“プリンセス”としてだけの自分にやがて違和感を覚えると、家庭以外でのアイデンティティを求めるように。やがてアンジェロ・フェレッティのもとでデザインを学び始めるが、すぐに第一子を妊娠し、研修を断念。それでも自分の夢を諦めなかった彼女は、1969年、夫とともに渡った新天地、N.Y.で行動に出る。新しい街で新しいスタートを、と翌年にデザイナーデビューを果たしたのだ。
(右写真)1972年のブランド誕生当時、ダイアン自身がモデルとなった広告写真。“Feel like a woman, Wear a dress!(ドレスを着て女性らしさを感じて)”
“女性を美しく見せる服づくり”を基本に、ワンピースを着ることで女性であることの喜びを多くの女性たちと共有したいというのがダイアンのクリエイションの原点。そんな彼女の成功の後押しをしたのが、アメリカン ヴォーグの伝説的編集長ダイアナ・ヴリーランドだ。シャツドレスほか数点のサンプルを見ただけで、その才能を高く買ったヴリーランド。そこから、デザイナーとしてのダイアン・フォン・ファステンバーグの大躍進が始まる。
今やブランドのシグネチャーアイテムとなったラップドレスが誕生するのは、それから数年後のこと。ダイアンが自らデザインしたラップのトップとスカートをニクソン元大統領の娘ジュリー・ニクソン・アイゼンハワーが組み合わせて着ているのをTVで観て思いついたのだという。試作を重ね、ついにお馴染みのドレスが誕生したのは1974年のこと。数々のセレブリティが愛用する様子がモード誌で紹介されるなどして大ヒット。1976年には500万着以上を売り上げ「ココ・シャネル以来、最も市場に影響を与えた女性デザイナー」とも称された。
ビジネスは拡大し続けたが、80年代になると第一線を離れてパリに移り住んだダイアンは、その後10年ほどのブランクを経て、アメリカに戻った90年代にデザインを再開。そのきっかけとなったのが、子供たち。ヴィンテージショップで母親の服を見かけ、人々が喜んで買っていくのを知り、母親を説得。トム・フォードを始めとする仲間たちも、彼女の復活を支えた。
(左写真)ラップドレスを纏い、オフィスで仕事をするダイアン(1970年代)
1997年の復活以来、今も人気を博すラップドレス。ヴィンテージラインでは、アーカイヴからリバイバルされたドレスがラインナップされている。30年前に発表された初期のドレスとほぼ違いのないデザインが、今も支持されていることは、この移り変わりの速いファッション界では奇跡に近い。長く愛されている理由は、時代、TPO、シーズンにも左右されない不変の優秀さ。その特徴は“effortless”。
体に沿うシルクジャージ素材がボディラインを美しく見せ、適度に開いたVネックは女性の美しさを強調。普遍的で華やかさのあるプリントは心をうきうきとさせる。共布のベルトは、ウエストラインのくびれを支える。このように、ラップドレスは、頑張りすぎることなしに、美しく女性を飾ってくれるのだ。旅行に持って行きやすいシワになりにくい素材である上、1枚でもきちんとした印象を持ち、通勤にも、またアクセサリー次第でパーティにもOK。さらには、体型を選ばず着る人によって表情が変わり、自在に適応するのも最大の魅力だ。
女性のために服作りを続けるダイアンは、発展途上国の女性の社会的地位向上を支援するNGO団体VITAL VOICESを支援。女性であることを誇りにしてほしいと、“proud to be woman”というメッセージがプリントされたアイテムを限定販売。売り上げの一部を寄付する活動も行った。「私は人に恵まれている。人に助けられ、人に愛されてきた。だから、これからは私が恩返しする番なの」とチャリティ活動にも熱心に取り組んでいる。
(右写真左)2008年にはアメリカンコミック『ワンダーウーマン』にインスパイアされたコレクションを発表。特製コミック誌上では同名のヒロイン、ダイアンと共演 (右写真右)“proud to be woman(女性であることに誇りを)”とメッセージが描かれたエコバッグは2009 Springシーズン中展開予定
仕事をし、多くの恋をしてきた、リベラルな女性のアイコンであるダイアン。ダイアナ・ヴリーランドに捧げられた2009年のスプリングコレクション“ROCK GODDESS”には、彼女の生き様を物語るキーワード、FREEDOMという隠れテーマも潜む。「どんな女性でも女神にもロックスターにもなれると教えてくれた彼女(ダイアナ)へ」というメッセージと共に発表された作品は、自由に動くシルエット、自由に組み合わされた柄×柄、色×色で、60年代の自由さを表現した。2009年のフォールコレクション“Nomad”(遊牧民)では、誰のクローゼットにもありそうなアイテムの組み合わせで新たなルックを楽しもう、新たなる可能性、さらなる自由を手に入れようと提案している。
「私の服を着ると美しく見えるのではなく、私の服に袖を通すことで女性たちが自信を持つから、強く美しくなるのよ」とダイアン。彼女の服を着ることは、その自由な精神にあやかることでもある。これが、ダイアン・フォン・ファステンバーグの服を着たときに感じる、あの湧き上がるような幸福感の秘密なのだろう。
(text / june makiguchi)
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DIANE von FURSTENBERG/ダイアン フォン ファステンバーグ
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