ヴィヴィアン・ウエストウッド。もはや誰もが認めるイギリスファッション界の重鎮である彼女が、夫でありブランドのクリエイティブ・ディレクターでもあるアンドレアス・クロンターラーとともに4年ぶりに来日。ランウェイショー「Vivienne Westwood Live in Japan」を開催した。
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舞台となったのは後楽園ホールのボクシングリング。メインは、2009年6月にミラノで発表されたメンズウェアを今回のために特別にアレンジしたもので、そこにレディスのゴールドレーベル、レッドレーベル、そしてアーカイブ作品を挟み込んだ。"CLOTHES FOR HEROES(ヒーローのための服)"と書かれた横断幕やブランドを象徴するORBロゴが描かれたリングの床がエンターテイメント性溢れるクリエーションを演出。ファンファーレが鳴り響き、"ROUND 1"のプラカードを掲げたモデルが登場してストーリーが幕を開けるという、新しい形のランウェイショーに、約1,200人の観客は一瞬にして歓喜の渦にのみこまれた。
なぜ舞台をボクシングリングに設定したのか? イギリスでは特に、ボクシングはロンドンのイーストエンドの若者に人気のスポーツで、1930、40年代には社会的に恵まれない若者たちに厳しい現実から這い上がるチャンスを与えていたという。そんなタフで誇り高きスピリットを持つ若き男たちにインスパイアされたアンドレアスが、彼らのボクシングウエアやデートで着るスーツを独自のセンスとで創り出したのが今回のショーというわけだ。格闘技会のチャンピオンである小比類巻太信選手と城戸康裕選手によるエキシビションマッチでは、その迫力ある技の掛け合いに多くの人々が拍手喝采。ショーのあり方自体に新しい風を吹き込んだパフォーマンスは、見る者の脳裏に焼き付く光景となった。
ここで一度、ヴィヴィアン・ウエストウッド本人について振り返ってみよう。本名はヴィヴィアン・イザベル・スウェア。イギリスのダービーシャー州グロソップで生を受けたヴィヴィアンは、17歳の頃、両親とともにロンドンへと移住。現在知られているヴィヴィアンのイメージからは到底想像もつかないが、思春期を迎えるこの年頃まで美術館に行ったことがなかったというから驚きだ。
そんな少女が、そのカリスマ性を世に知らしめるきっかけとなったのがマルコム・マクラーレンとの出会いだった。70年代、ロンドン。それは、ユースカルチャーがかつてなく最前線に躍り出た伝説の時代。マルコムとともに始めたキングスロード430番地のショップは、"Let It Rock"という名でまず知られるようになる。それから"Too Fast To Live, Too Young To Die"、"SEX"、さらに1976年にパンクが台頭してからは"Seditionaries"、"World's End"と新しいコンセプトを発表するたびに名前からショップの装飾までも変えていった。この革新的なチャレンジ精神、誰も見たことがない奇抜で反社会的なファッション哲学が、ストリートの若者の圧倒的な支持により彼女をアヴァンギャルドの女王としてスターダムへと押し上げることになる。
(右写真)オーブロゴを花でアレンジした、ブーケorbペンダント ¥40,950
1981年3月、イギリスのアヴァンギャルドの象徴となった頃、ヴィヴィアン・ウエストウッドはロンドンのオリンピアにて初のキャットウォークプレゼンテーション"パイレーツ"を発表。以来、常にトレンドをリードしてきた時代の先導者は1984年にそのファッションの方向性を転換する。次にヴィヴィアンが魅せられたのは、イギリスが誇るサヴィルローのテクニックや17世紀の生地、そして18世紀のアートなど文化的背景が色濃く映し出された分野だった。"伝統をもって未来を創る"という彼女のクリエイティビティを象徴するORBロゴが初めて使われたのもこの頃だ。
ただ、彼女の歴史や芸術への造詣の深さは純粋に学術的なもので、保守的という言葉は似合わない。例えば、ロココやバロック調の貴婦人さながらのエレガントな服も、極端なまでにヒップを強調したクリノリンのミニスカートやバストが締め付けられたコルセットが性の問題を想起させるし、また過去には機敏なスーパーモデルをも泣かせるスーパーハイヒールや目隠しをされてよろめきながら歩く花嫁など、道徳的にタブーとされるものを作品化している。既成概念にとらわれない挑発こそが彼女の流儀なのだ。そんな彼女のイギリスファッション界に対する功績が認められ、エリザベス女王より"デイム"の称号を与えられたことは記憶に新しい。
そして、ヴィヴィアンが最近最も関心を寄せているのが環境問題。パリで発表された2010年春夏コレクション・ゴールドレーベルのテーマは「惑星ガイア」。ここでは大気中の二酸化炭素が増えると気温が今より5度上昇する、という危惧をスローガンに掲げたプリントのアイテムや、DIY精神を謳って写真やメッセージをコラージュしたARシャツなど、ヴィヴィアン流のエコロジカルな作品が登場した。より自身を高め、より人間らしくありたいと思う全ての人のために、とショーやパブリックリーディングを通じて文化的マニフェストを推進する彼女の姿勢には、これからも多くの人が共鳴することだろう。公私ともに最高のパートナーであるという夫、アンドレアスとともに。
(text / Yoko Kondo)
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ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーション
Tel:03-5791-0058
(右写真)「Vivienne Westwood Live in Japan」のフィナーレに登場したアンドレアスが、観客席で見守っていたヴィヴィアンの手をとりともに壇上へ。拍手喝采のなか、ランウェーを歩く2人。
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