「死ぬほど好き」「はらわた煮えくり返った」「吐くほどマズい」のように、感情が激しく動いたときに記憶は強烈に残るものらしい。
感情が豊かな私は、自慢じゃないが記憶力がいい。だが実はすぐに忘れちゃうことがひとつだけある。 昔好きだった人のことだ。
なぜその人を好きだったのか、その理由をサッパリ忘れてしまう。記憶力抜群の私が陥ったパラドックスである。
『冬ソナ』とか『セカチュー』が流行し「誰にでも忘れられない相手っていますよね」的ムードが蔓延する世の中で、私のような人間は「冷たいヤツ」とか「寂しい女だ」と蔑まれる。 肩身が狭い。 なんか釈然としない。
忘れられない相手との9年ぶりの再会を描いた『ビフォア・サンセット』を見て、このパラドックスの答えが見つかった。
とはいえ作品はさておき、ここに「忘れられない相手」がいる100人の成人がいるとする。うち53人くらいはその人との再会を望まない。自分が長年かけて相手を美化していること、それが実像とかけはなれていることに、どこかで気付いているタイプである。
次に残りの47人が実際に再会したとする。
そのうちの35人くらいは「こんなシワシワだった?」「こんなデブだった?」と、その実像に幻滅するに違いない。 |