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『美しき運命の傷痕』のオープニングの1シーンだ。ある中年男が出所の日を迎え、刑務所の高い塀沿いの田舎道を歩いている。ふと足を止めたのは、道沿いの草むらの中から小鳥の弱々しい囀りが聞こえたからだ。男はまだ産毛すら生えていない雛鳥が巣から落ちていることに気付いてそっと拾い上げ、その頭上にあった小さな巣に戻してやる。男は心優しい善人であり、彼が服役した理由もそこにある。だが彼の妻はその「善意」を恨みぬいているのだ。 ![]() さて、冒頭の1シーンには続きがある。男が巣に戻した雛はカッコウの雛だった。カッコウは別の鳥の巣に卵を産み、そこの親鳥に雛を育てさせる習性がある。そしてその雛は卵から孵ると、同じ巣にある本来の住人の卵を巣から落として殺してしまう。優しい男が去った後、巣からは卵が落とされ、グシャッと割れる。善意は本当に難しい。 (text / Shiho Atsumi ) ![]() ![]() 3姉妹とその母。激しくも美しい愛と再生の物語を描いた『美しき運命の傷痕』。巨匠キェシロフスキの遺稿を完全映画化した本作の公開を記念して、3姉妹の長女を演じたエマニュエル・ベアールとダニス・タノヴィッチ監督が来日した。 ブラックのロングシルクジャケットに鮮やかなドレスで登場したベアール、まずは「ボンジュール!」と大きな声で挨拶。「日本には10~15回ぐらい来ています。日本は本当に素晴らしい国だと思うわ、とくに視点や笑いの感性。日本のみんながまるごとフランスに引っ越してきて欲しいくらい」 女優であり2人の子どもをもつ40歳の母親でもあるベアールの“美しさ”の秘密について の質問には、女優らしいコメントが。「映画女優という仕事、映画というものはわたしの人生そのもの。偶然から始まった女優というお仕事だけれど、いつも溢れるほどの愛情をもって作っているの。私が作品に出演するかどうかは、そのキャラクターが作品の中でどういう存在なのか、どう描かれているのかが重要。キャラクターを追求しなくてはいけないから。そのキャラクターが私を呼んでいる場合もあるわ。そして、女優という仕事は監督から与えられて初めて成立するもの。映画があって私というのものが存在する。そして映画はチームでつくるもの。新しい作品に取り組むたびに、荷物をバッグにつめて好きな人たちと“映画作り”という旅に出るのよ。この旅は一生続いていくでしょう」 感謝と気遣いを忘れないベアールとタノヴィッチ監督に、記者会見の最後にマスコミ陣からは拍手が沸き起こった。 ![]() 監督:ダニス・タノヴィッチ |
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