

女子高生の制服を思わせるチェックのミニスカートをはいているが、どうみても27、8のとうのたったロリータと、彼女をナメそうなほどベタベタする男というカップルを見た。昨日、恵比寿でのことである。
こういうカップルに対して世の中は、キモイ許せない勘弁してほしいの大合唱だが、私は意外と許せてしまうほうだ。ひと目でそうとわかる「他人の視線が興奮剤」プレイのカップルは絶対見てやらない、もしくはあからさまにジロジロ見て聞こえるように話題にして差し上げることもあるけれど、冒頭のカップルはおそらく周りが目に入らない、もしくは他人がどう思おうとご勝手にという人たち。“会いたい触りたいチューしたい”が最優先の微笑ましいバカップルである。だが一般論とか社会に無関心な人間は、ある意味ものすごくアナーキーな存在だ。70年代のヒッピーみたいなもんで、僕らは僕らの幸せ追求するだけ、政治とか社会なんて関係ないね〜とへらへらしてたら、怒る人いるでしょう。そういう人たちは“ベタベタすること自体(僕らの幸せの追求)”に怒ってるんじゃなく、“ひとめをはばからないこと(政治や社会なんて関係ないね〜)”に怒ってるのである。自覚はないかもしれないけど。
『戦場のアリア』のヒロインは有名なオペラ歌手だが、そんなべたべたカップルの片割れといっていい。第一次大戦で前線に送り出された夫に会いたい一心で、戦場の、それも最前線の塹壕まで行ってしまう女なのだ。そこにたどり着くまでの物語は詳しくは書かれていないが、「そんなのは狂気の沙汰だ」「このご時世に不謹慎な」「みんな我慢してるんだ」とかいろいろ言われたに違いない。
だがそんなことお構いナシに貫き通された愛情が、奇跡の呼び水となる。昨日まで殺しあっていた兵士たちを休戦させ、互いに友人にしてしまうのだ。愛を至上命題とするバカップルの素晴らしさは、世の中が正気だろうと狂気だろうと影響を受けないこと。そもそも一般常識なんて時代や国や政治によって変わっちゃう不確かなもの。そんなもんに負けないラブこそ、ピースを生むのである。 (text / Shiho Atsumi )
『戦場のアリア』
監督:クリスチャン・カリオン
出演:ダイアン・クルーガー、ギヨーム・カネ、ダニエル・ブリュールほか
配給:角川ヘラルド・ピクチャーズ
製作国:フランス・ドイツ・イギリス合
劇場情報:2006年4月29日よりシネスイッチ銀座、恵比寿ガーデンシネマ他にて公開
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