

姉妹は身体が一部結合した双生児だ。栄養が上手く行き渡らず、姉は頭はいいが外見的にはカピカピの老女のようで、妹は外見は花のように美しいが頭はちいと足りない。姉は妹の面倒をすべて見ているがかわいがられるのはいつも妹なので、「なんで私ばっかり」と思っている。妹さえいなければと思っている。そして年月が過ぎ、2人はついに切り離されることになる――とは、マンガ家、萩尾望都の傑作短編『半神』のストーリー。映画『カポーティ』を見て、私はこれを思い出してしまった。
『カポーティ』は、作家トルーマン・カポーティのベストセラー「冷血」が生まれるまでの裏側を描いている。ネタは1959年にカンサスの田舎町で起きた一家4人惨殺事件で、主人公は犯人のひとり、ペリー・スミス。カポーティはこの男に興味を引かれ、刑務所に何度も何度も足を運ぶ。ところがだんだん見えてくるその素顔は、実はカポーティそっくりである。両親は離婚し、母親はネグレクトで挙句に自殺、親戚をたらいまわしにされて育ち、学校にはほとんど行けておらず、チビのイジメられっ子で、孤独で自己顕示欲が強く……もひとつ加えれば、他人の気持ちなんてなんとも思っていない。ペリーは殺した家族への罪悪感をぜんぜん感じていないと告白しているし、その彼にさも友人顔で近づいたカポーティはペリーのことを「金脈」と公言してはばからない。ふたりは偶然出会ってしまった“運命の双子”なのだ。そして映画のクライマックス、カポーティはペリーの処刑に立ち会うことになる。ペリーの死刑を待ちのぞみ、ヘドがでるほどいやなヤツだったカポーティは、ここで壊れてしまう。
さて『半神』のラストだ。切り離された姉はその恩恵を受けて若々しく甦る。ところが妹は栄養状態が悪化、カピカピになり死んでしまう。妹さえいなければと思っていた姉は、以前の自分とソックリな姿で死んだ妹を見て思うのだ――死んだのは自分かもしれない。カポーティとペリーは、実は本当に姿かたちも良く似ている。その処刑を見て、カポーティは思ったかもしれない――死んだのはペリーにそっくりな自分、ペリーを食い物にした本当の“冷血”である自分じゃないか。その後、アルコールとドラッグの中毒やうつ病に陥ったカポーティは、一本の小説も書けなくなってしまった。小説家カポーティは「冷血」とともに死んでしまったのだ。 (text / Shiho Atsumi )
『カポーティ』
監督:ベネット・ミラー 原作:ジェラルド・クラーク
脚本:ダン・ファターマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン/キャサリン・キーナー / クリフトン・コリンズ・Jr
クリス・クーパー / ブルース・グリーンウッド
配給:ソニー・ピクチャーズ
劇場情報:2006年9月30日(土)、日比谷シャンテシネ、恵比寿ガーデンシネマ 他全国順次ロードショー
<9月30日はカポーティの生誕日>
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