プラダを着た悪魔
cinema21世紀のプリティ・ウーマンに必要なのは、悪魔のような上司とゲイと慰謝料

イモ丸出しのヤボったい女の子が、あるきっかけで贅沢なファッションやセレブの世界に足を踏み入れ、ぐんぐん垢抜けてキレイになっちゃった上に、新しい生き方を見つけてゆく――

これってファッション誌の編集部を舞台に、ジャーナリスト志望のアンディがイッパシの業界人になるまでを描いた『プラダを着た悪魔』の話なのだけれど、なんとなく似てる。『プリティ・ウーマン』に。ジュリア・ロバーツをスターダムにのし上げたこの作品の公開は1990年。当時、世の中のなんたるかを何も知らなかった私は、M&Aでガンガン稼ぐギア様が演じたリッチで優しく孤独でハンサムなエドワードにメロメロになったものである。でも90年の全米興行第1位を獲得したんだから、そうなっちゃったのは私だけじゃないだろう。あの頃、多くの女性は大なり小なり、いつかギア様のようなリッチな二枚目が迎えに来てくれることを夢見ていたのかもしれない。当時の女の人生を変えてくれるのは、男と(その男が持っている)金だったのである。だが似たような女性の変貌を描いた『プラダ』で、イモ姉ちゃんを洗練された現代のレディに仕立てるのは、悪魔のような女ボスのシゴキとゲイのファッション・ディレクターだ。つまり仕事と自信とゲイである。そりゃ今だって金のある男がいるにこしたことはないが、そんなのなくても女はキレイになれちゃう時代になったのだ。

プラダを着た悪魔

時は流れ、花も嵐も踏み越えてきた私は、あんな男が実際にはいないことに気がついた。そしてもうプリティじゃなくなっちゃったであろうプリティ・ウーマンの“今”を考えるのだ。「欲しいのは金じゃなくて愛なの」的に男のもとを去ったクセに、結局はリッチな彼と結婚した彼女。真実の愛とリッチな生活を同時に手に入れた…つもりだったが、数年が経ち、彼はやっぱり“禿げ鷹ファンド”だったことに気付く。世界中を飛び回りM&Aでガンガン稼ぎ、彼女のことは省みず、彼女が少し責めれば出会った頃のように自分の殻に閉じこもってしまう。彼女は、男の金がなくとも美しく輝く21世紀のプリティ・ウーマン=『プラダ』のアンディを見て、ため息をつくのだ。離婚である。もちろんべらぼうな慰謝料をふんだくり、自分ではじめるビジネスの資金にするのだ…まあ、こんなのも21世紀のプリティな女の生き方である。 (text / Shiho Atsumi )
2006,アメリカ,FOX ©2006 TWENTIETH CENTURY FOX

『プラダを着た悪魔』

監督:デヴィッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ、エイドリアン・グレニアーほか
配給:20世紀FOX
劇場情報:2006年11月18日より日比谷スカラ座ほか全国にて公開

 

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