ホリデイ
おうちを変えて生き方を変える、“千利休”式の意識改革

『ホリデイ』は、ロスとロンドンに住む二人の30女が、失恋から立ち直って新たな恋を見つけるまでを描いたロマンティック・コメディだ。ひとりはビバリーヒルズの豪邸に住む女社長で、恋をシミュレーションして落ち度が一つでも見つかれば即座にぶっ壊してしまうアマンダ。もうひとりはロンドン郊外のコテージに住むジャーナリストで、別れた恋人への未練が断ち切れず都合のいい女として二股かけられているアイリスである。もし私の友人にいたなら、アマンダには「あんたのホントの気持ちはどーなの?」と言いたくなるし、アイリスには「そんな最低男、ぶった切るガッツはないのか!」と言いたくなるに違いないのだが、20代ならまだしも30代も半ばを過ぎるとそんな忠告は何の役にも立たない。んなこと分かった上での堂々巡りをしがちなのである。映画でそれに終止符を打ってくれるのは、家の交換だ。

人間の行動や気持ちは、意外と周囲にあるモノとか環境が持つ情報に操られている。簡単にいうと、壁に穴があると覗きたくなるし、スイッチがあれば押したくなるし、障子があると指にツバつけて穴あけたくなるでしょう。私だけか。例えば固そうな椅子に座るときはストンと腰掛けるけど、フカフカのソファならどーんと身を任せちゃうでしょう。それは、それぞれの椅子が発している情報(“固い”と“ふかふか”)に、人間の行動が操られているってことで、これを生態心理学なんかの分野で“アフォーダンス理論”と言うそうな。この当たり前っちゃ当たり前の考え方はプロダクトデザインとかインテリアデザインに応用されている。例えば千利休の茶室の“にじり口”はものすご~く小さいので、武士は腰から刀をはずして頭を下げないと入れない。千利休は茶道を通じて人間の平等を考えた人なのだが、要するに何度も茶室に出入りさえることでエラぶった武士の意識改造をしたのである。

ホリデイ

さてアマンダとアイリス。雪景色のロンドン郊外にポツンとたつ郊外のコテージで、暖炉の火を見つめながらお茶を飲むくらいしかすることがないアマンダは、「つい理屈で考えちゃうけど、私の正直な気持ちはどーなのかしら?」と考え始める。一方、ピカピカな太陽が輝くエネルギッシュなL.A.のアイリスは、ボタンひとつですべてが思いのままに動くゴージャスな家で、「あんな男がなんだっつーんだ!」というガッツを取り戻す。もしアナタが恋愛の暗いトンネルにいるなら、自分がアマンダなのかアイリスなのかを見極めて、即引っ越すのだ。見えてきた出口には、ジュード・ロウはムリとしてもジャック・ブラックぐらいは待っていてくれるかもしれない。 (text / Shiho Atsumi )

『ホリデイ』

監督:ナンシー・マイヤーズ
出演:キャメロン・ディアス / ケイト・ウィンスレット / ジュード・ロウ / ジャック・ブラック
配給:UIP映画
劇場情報:2007年3月24日より日劇3ほか全国にてロードショー

バックナンバーを見る

このページのトップへ戻る

バックナンバー

バックナンバー一覧


サイト内検索