

「始業時間ですよ」とか「有給休暇は消化してね」とか「オフィスお掃除キャンペーンでーす」とか、会社員はいろんな決め事にしたがって動く。それはそれでうっとーしーのだが、フリーランスの場合は誰も何も決めてくれないので、時には昨日サボったから今日は不眠不休とか、片付けなかったばっかりに崩れた資料の山に下敷きとか、そういう憂き目を見る。そんな苦汁を飲んできた私は日本人にしてはサクサク決断する人間に育ち、たかがランチを決めるのに「決められな~い」みたいな若造を見ると、いい大人がぐずぐず言うなーっ! 一本背負いを決めたくなる。だが「世の中、白か黒でしょ。迷う必要がどこに?」と自分の信じる方法でガンガン進むアメリカンな相手だと、そこは純和風にタジタジしてしまう。迷いのない、ある意味での純粋さが、なんか怖いのだ。その最たるものが宗教者である。
『マイティ・ハート/愛と絆』は、2002年にパキスタンで誘拐されて殺されたジャーナリスト、ダニエル・パールの関係者が、彼を助けるために奔走する数日間をドキュメンタリータッチで描いた作品である。実行犯はイスラム教過激派で、彼がユダヤ人だったことも関係しており、そこには当然ながら宗教が横たわっている。主人公はアンジェリーナ・ジョリーが演じる彼の妻で、ジャーナリストでもあるこの人は妊娠中にも関わらず、悲しみに耐えながら気丈に対処し、事件が最悪の結果に終わった後も誰も責めない。こういう映画にこんなこと言っちゃいけないってわかってるんですが、私、ぜんぜん感情移入できなかった。エラすぎるのだ。なんでこの人こんなに強いんだろうと、いろいろ調べて、彼女が敬虔な仏教徒だと知った。ジャーナリストで宗教者。その信念の強さに、なんか違和感を感じたのだ。
例えばアメリカ・イズ・ナンバー1と思ってる人、あらゆる宗教の原理主義者、独裁者を崇めている人……信じる気持ちが強い人は、立ち止まらずガンガン進む。トピックが“環境”ならそれもいいけど、“平和”だったらもうちょっと立ち止まり、みんなが迷ってもいい気がする。アメリカ的にはこうですが、イラク的にはどうですか。キリスト教的にはそうなんでしょうが、仏教的にはこうでして。まあじゃあ、どっかで譲り合わんといけませんな。いやはや、ひとくちに平和っていっても難しいですなあ――みたいな優柔不断な話し合い、できないのかなあ。
(text / Shiho Atsumi )
製作:プランBエンタテインメント(ブラッド・ピット)
監督:マイケル・ウィンターボトム
原作:マリアンヌ・パール
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ダン・ファターマン、アリアンヌ・パンジャビ
配給:UIP映画
劇場情報:2007年11月23日より全国にて公開!









