『プルートで朝食を』の主人公キトゥンは捨て子のゲイである。生後間もなく教会に捨てられ、母親を知らない。トラブルだらけの人生を生き抜くために彼が会得した方法は、キラキラしたものを夢見ること。一番のネタは母親で、究極にとっちらかると「私のママは金髪で美人で優しくて……」と勝手なストーリーを頭に思い描く。大人になって田舎町からロンドンに出てきた彼は、大都会のどこかにいるらしい母親を捜し始める。自分を生んだ人、自分のルーツに会いたいのは当たり前というまっとうな理由や、「母親のいるあんたには所詮分からない」という非難は承知の上で、あえて私は問いたい。なんで捜すかな、母親を。
ゲイの息子と母親の関係を描いて心に残るのは『トーチソング・トリロジー』だ。自分の生き方を認めて欲しい息子と、それを拒絶する母親は――何も相談せず勝手に生きて!どうせ反対するくせに!なんでそんなにゲイでいたいの?理由なんてない!病気ね!見下すなら出て行って!どんなにイヤでもアンタの母親はこの世でアタシだけなんだからね!――と激しくぶつかり合う。30代の未婚女性の多くが身に覚えのある、母と子の絡んでこじれた愛情は見ていて非常にイタい。キトゥンと母との再会も大なり小なりこんな危険性を孕んでいたのだが、彼は賢くも自らの正体を明かさない。悲しみを悲しみにしない方法を本能的に知る彼は、理想のままの母親を永遠に愛する事を選んだのである。

母子関係は互いに何も求めず、何も求められずが一番平和なのかもしれない。キトゥンのような状況でない限り、母親はいくつになっても子供とはヘソの緒でつながっているくらいに思っているフシがある。どんなにイヤでもアンタの母親はアタシだけ!と詰め寄ってくる。土曜の昼下がり、この原稿を書いているカフェの外にも多くの家族連れがいるが、どの子供も母親に引っ付いている。
そんな幼い日々から30年を経た私はといえば、過ぎてしまった母の日に彼女が何が欲しいかも知らないくせに、何を選べば喜んでもらえるのかと思案している。ああ、なんてやっかいなんだ、母親。 (text / Shiho Atsumi)
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監督:ニール・ジョーダン
出演:キリアン・マーフィ、リーアム・ニーソン、スティーブン・レイほか
配給:エレファント・ピクチャー
製作国:イギリス
劇場情報:2006年6月10日よりシネスイッチ銀座にて公開
出演:キリアン・マーフィ、リーアム・ニーソン、スティーブン・レイほか
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