恋愛は純粋なものか? と聞かれると、10代の頃…いや、20代半ばくらいまでの私は“イエスっ!”と答えていたと思うけれど、アラフォーになっちゃった今となっては、んー、ど~かな~と、黄砂飛びまくりの春の空的なモヤッとした答えしかできない。
だってさあ、決して純白とはいえない二人の人間の関係が、そんなキレイ事ですむワケないじゃん。そもそも恋人同士の「愛してるなら何でもできるはず」っていうムードのやりとりがパラドックスである。「愛してるなら」何か買って、ムチでぶたせて、浮気しても許して…って、お前こそ愛してるなら要求せずに我慢しろっ!っつう話だ。でもそうなると真に愛し合うふたりは互いに要求せず、束縛せず、相手の行動を許しまくるわけで、これじゃあ無関心カップルと変わらない。恋愛は純粋に愛する感情だけで成り立ってはいない。いろんなものとくんずほずれつしながら、汚い世の中に転がっているものなのだ。金とか見栄とか名誉とか快楽とかとね。

『メイプルソープとコレクター』は、80年代に一世を風靡したアメリカの写真家ロバート・メイプルソープのパトロンであり、同性愛のパートナーだったサム・ワグスタッフの生涯を追ったドキュメンタリーである。名家の生まれで超二枚目、大金持ちのワグスタッフは、独自の審美眼で美術品を掘り起こす名うてのコレクターでキュレーター。自分を世に出してくれる大人を捜していたハタチそこそこのメイプルソープは、彼と出会ってカメラを買ってもらい、彼のコレクションから写真を学び、コネを十分利用してのし上がってゆく。
「メイプルソープは他人を操るのがうまい男だった」「メイプルソープは自分しか愛さない」「サムは彼の金づるだった」「メイプルソープがサムに優しくしているのを見たことがない」……誰もがふたりの関係をそう語り、もちろん客観的に見ればそうなんだけれど、私は言われているようにワグスタッフが「情けないホモに成り下がった」とは思わない。コレクションに必要なものを「情熱と知性、性的魅力と投機」と語る彼にとって、才能あるメイプルソープは投機的な意味のある「コレクション」だったと思うし、盲目な恋愛の対象でもあり、他人に見せびらかすアクセサリーでもあった。それに彼との出会いで、スーツ姿の上流階級だったワグスタッフは、皮ジャケットの同性愛者として開眼する。その快楽たるや。ワグスタッフに優しくしないメイプルソープだって、ふたりきりでいるときの“ツンでれ”プレイの前戯かもしれない。
この歳になると友達の恋愛相談も少なくなるけれど、それは必ずしも恋愛中の人が減ってることが理由じゃないのかもしれない。純白じゃない30代40代は、自分の恋愛が必ずしも他人には理解されないってことを分かっている。「利用されてるだけ」「そんな男と別れなさい」と言われるにきまってる。でもその恋はきっと、汚く打算的で、快楽に満ちているに違いない。
(text/shiho atsumi)
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『メイプルソープとコレクター』
原題:Black White + Gray A Portrait Of Sam Wagstaff + Robert Mapplethorpe
監督・脚本:ジェームズ・クランプ
出演:サム・ワグスタッフ、ロバート・メイプルソープ、ドミニク・ダン、パティ・スミスほか
劇場情報:2009年3月28日、ライズXにてロードショー! 順次全国公開
配給:ロングライド
©JCPLLC and LM Media GmbH, 2007. All rights reserved.
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