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南極料理人

南極料理人

人間の悩みは、突き詰めればすべて「感情」と「理屈」の対立。「食べたい!」と「食べれば太る!」とか、「働くのイヤ~!」と「会社辞めたら食っていけない!」とか、まあそういうことで、一見「理屈vs理屈」に見える「金と力を持つ傲慢男」と「果てしなく優しい貧乏男」という二択の悩みも、考えているうちに「じゃあより好きなのはどっち?」ってことになり、結局は「好きなのは貧乏男」だけど「金は必要」という「感情」と「理屈」の対立になる。どちらを選ぶかは人により、時と場合によりけり。私の場合、基本、悩んだら感情に従っちゃうことにしている。「どーしてもイヤだーっ!」って思いながら身体壊すくらいなら、他人のことなんか考えずに逃げちゃうのが一番。ケツを拭くのも自分と観念すればことは簡単。問題はどうにもこうにも逃げられない時。さてどうするか。

映画『南極料理人』においてその難局とは、ダジャレだけど“南極”である。舞台は南極大陸の内陸1,000キロにある、ドームふじ基地。平均気温マイナス54度、ものすごい寒い日はマイナス70度を越えちゃうその場所では、例えばちょっと油断して防寒マスクをせずに10分屋外作業をすればたちまち凍傷、最悪ホッペや鼻が壊死してボロッと落ちちゃったりする。さらに標高が4,000m近いので空気が薄く、ちょっと歩けば呼吸はゼイゼイ。1,000キロ歩いて脱出するなんて絶対無理で、じゃあクルマでと思っても氷の大地はえらくデコボコでスピードが出せず、1,000キロ行くのに20日もかかる。ザックリ言うと、一度来たら最後、絶対に逃げられない。んじゃこの映画が描く南極越冬隊の日々は、どーんと重く暗いのか? これがまったくの逆、妙に楽しそうなのだ。“諦め受け入れ腹を決め開き直った”彼らは、カキ氷シロップで氷の地面にダイヤモンドを書いて野球大会をし、マイナス60度の屋外で全裸ガマン写真撮影会をし、帰国後にトライアスロンに出ることを目標に高地トレーニングをし――人間、逃げ場がなければ、どうにかやり過ごすものだし、その中に意外な楽しみも見つけられる。

南極料理人

そんな心の余裕ができるまでは、手っ取り早い笑顔のためにおいしいものを食べて、楽しく騒ぐ。これまた南極式お手軽難局脱出法である。まあ食いすぎちゃうかもしれないけど、まず南極状態を無事に生き抜くことが先決。

「食べたい」VS「太りたくない」の葛藤は、南極から帰国した後、ゆっくり悩めばいいんだし。食ってるうちに、意外とここは南極じゃなくて、東京なんだってことに、気づくかも知んないし。
(text / shiho atusmi)

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南極料理人

『南極料理人』


監督・脚本:沖田修一
出演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、西田尚美、豊原功補 他
劇場情報:2009年8月8日(土)より、テアトル新宿にて先行ロードショー
     2009年8月22日(土)より、全国ロードショー
配給:東京テアトル
©2007 2009『南極料理人』製作委員会


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