正統派の二枚目にあんまり魅力を感じない私は、「ほら、編集部で一番の二枚目で…」とか言われると、いつもその人の顔を思い出すことができない。もちろんその人の顔は何度も見ていて、データ的な記憶としては「編集部で一番ハンサムな**さん」ってことになってるんだけど、その人の顔を具体的に思い出そうとすると、ぜんぜんダメ。なんでかなーと思っていたのだが、「正統派のキレイ顔は、あらゆる個性を中和した顔だ」という説を聞いた時に、妙に合点がいった。ヨン様の顔とか考えるとわかりやすい。要するに“キレイ”とは調和を乱す欠落や過剰がないってことで、私的には、それぜんぜんつまんなくて、素敵と思えないのだ。
いまやアメリカでは、試験管の中で作った受精卵の時点で遺伝子を確認し、“求める遺伝子を持つ子供”を産む親がいるらしい。そのひとつの形態が“ドナーチャイルド”である。『私の中のあなた』は、そのちょっとヘビめなテーマを扱った映画で、主人公の妹ちゃんは骨髄性白血病の姉の遺伝子にマッチするドナーチャイルドとして生まれる。誤解を恐れず言うなら、お姉ちゃんの健康を維持するための人体パーツ工場だ。この技術は、まだまだ実現不可能なクローン技術と似た倫理的問題を、リアルにしてしまう。特定の遺伝子を持つ子供を作れるってことは、好みのバービー人形を選ぶみたいに、金髪がいい、色白がいい、太らずハゲず、頭が良くて……てな具合に、遺伝子で子供をデザインできちゃうのだ。もちろん先天的な遺伝子病の遺伝子を排除できるなんていう、いいこともある。でも遺伝子なんてまだすべてが解明されていないんだから、思いも寄らない事態だって起こるかもしれない。たとえば全世界がハゲ遺伝子を拒絶したことで、その遺伝子だけが耐性を持っていた未知のウィルスが流行しちゃったら、全世界が髪の毛フッサフサの病人だらけみたいになっちまうだろう。そもそも全世界金髪フッサフサの二枚目だったら、そんなの見飽きちゃって、私みたいにつまんないと思う人だって出てくるに違いない。あんまりいないスキンヘッド(ま、ハゲですね)が新鮮で、逆にモテモテになったりとかすんじゃないだろうか?

結局、人間は完璧なものを愛すわけじゃないし、よしんばそうだとしても、世界が変われば完璧の定義だって変ってしまうのだ。『私の中のあなた』では、母親はもちろん、ドナーチャイルドである妹さえも、病気のお姉ちゃんを世界一愛している。その理由は、お姉ちゃんが完璧だから、であるはずがない。自分が他人と違う自分である証明は、あらゆる意味での欠落とか過剰とか、そういうところにこそある。だから他の誰でもない自分が愛される理由もそこにあるに違いない。
(text / Shiho Atsumi)
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『私の中のあなた』
原題:My Sisters keeper
監督:ニック・カサヴェテス
出演:キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ポールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ
劇場情報:2009年10月9日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国にて公開
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
©MMIX New Line Productions,Inc.All Rights Reserved.
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