「出会いがないのよねー」とか呟くと「その気になれば、男なんてたくさんいる」と、主に母親とか主婦の友達とかに言われたりして、「いやいやだから、その気になる男がいないんだよ」と反論したくなるものの、あ、この話は絶対にかみ合わないんだと瞬間思い出し、言葉を飲み込んだりする私。まあ「“その気”が先か、“その気になれる男”の存在が先か」っていうのは「卵が先かニワトリが先か」レベルの永遠の問題、その点では相手の言うことも一理ある。あ、でも決定的な違い発見。こっちが意味する“その気”は“トキメキ”なのに、あっちの“その気”は“結婚する気”だ。これを話題にすると、「んな、思春期じゃあるまいし、トキメキなんてあるわけない」という、また別の方向から叱られる。でも80歳のおばあちゃんだってヨンさまにはときめくんだから、トキメキ不足には絶対別の理由があるに違いない。答えがうまく見つからない時、私のやり口としては、時代のせいにする。そうだそうだ、時代が悪いー!
さてそんな中で、7月公開『ぼくのエリ 200歳の少女』。12才のいじめられっ子オスカーと、少女ヴァンパイアの恋愛もの、胸がキュンとなるくせしてちょっと怖い。実は最近、全世界的にヴァンパイア映画が大流行中。これが「トキメキ不足」の時代と関係しているに違いないと、私は見ているのである。なぜかといえば、ヴァンパイアはもともと人間で、人間の友達も恋人もいるのに、おなか減っちゃうと彼らが“今日のご飯”に見えちゃうでしょう。そこにあるのは人間の三大欲求のふたつ、食欲と性欲のガチなぶつかりあいで、食欲が勝ちゃうとホラーになる。いやいや、人間性と欲望のぶつかりあいかもしれない。同根ともいえる食欲と性欲は、ロマンチック系では美しい禁欲によって「うーん、じれったい~!」というポイントで、寸止めされるのだ。オスカーとエリの恋愛では、エリは次々と人を殺して血を吸い、一歩間違えばオスカーも殺しかねない。オスカーはそれを知って、怖いと思いながらも、エリと離れられない。幼い二人の心に去来する、ギリギリ感・命懸け感・背徳感。その合間に、湧き上がる幸福感と快感――これぞトキメキ。「その気」になるために必要なのは、ふたりの前に立ちはだかる障害なのだ。

今の時代、日本では人種も国籍も宗教もさほど恋愛の問題にならない。不倫カップルも年の差カップルも同性カップルも、ま、いいんじゃない?と誰もがサラッと流してくれる今の日本では、トキメキのための障害はファンタジーの中にかないのだー!
あ、でも。
「障害を乗り越えても絶対に一緒になりたい!」と思う男が、いないかも。(text/shiho atsumi)
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『ぼくのエリ 200歳の少女』
原題:LET THE RIGHT ONE IN
監督:トーマス・アルフレッドソン
原作・脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト(「モールス」ハヤカワ文庫刊)
出演:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナル
劇場情報:2010年7月10日より銀座テアトルシネマほか全国にて順次公開
配給:ショウゲート
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- 『ぼくのエリ 200歳の少女』
- “その気”が先か、“その気になれる男”が先か
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- 『プレシャス』
- とにかく悲惨で過酷な運命を、笑いとキラキラ妄想力に変える力、これぞ「ゲイ力」
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