神楽坂「しなり」 江戸情緒が残る花街で、大和撫子気分を
神楽坂「しなり」 江戸情緒が残る花街で、大和撫子気分を

古くから花街として知られる神楽坂。今でも粋な大人たちの遊び場で、まだまだ敷居の高い雰囲気の街であることは変わりない。そんな歴史があり、名だたる老舗がひしめくこの街に、料亭『しなり』が仲間入りしたのは1年前。玄関を一歩入ると漂ってくる、新築特有の杉のほのかな香りがその証だ。

(写真上):¥10,000のコースより、焼八寸(かます味噌幽庵焼き、難波焼きと海老鉄扇、鶏松風、青唐揚浸し、焼き茄子海胆のせ、山桃、衣かつぎ)。通常の焼物と八寸を組み合わせたのは、女性は多くの品数を少しずつ食べたいであろうという心遣いから。

コースより

この店がオープンに至った経緯がおもしろい。日本橋の老舗呉服店が、女性が着物でおしゃれをして遊びに行ける場所を提供したいという気持ちがキッカケだったという。最近の着物懐古ブームで、気軽に着物で出掛ける女性も増えてきた。どうせならば、その着物が映え、身も心も大和撫子になりきれる場所を訪れたいもの。その欲求を満たすのにうってつけなシチュエーションとして、着物と日本文化を知り尽くしたプロフェッショナルが辿り着いたのが神楽坂の料亭だったのだ。

(写真左):¥10,000のコースより、座付(済まし仕立て胡麻豆腐、海老、絹さや、占地、柚子)。料理は、旬のものが最も美味しくいただける月替わり
(写真右):¥12,000のコースより、蓋物(蛸の柔煮、小芋、千石豆、振り柚子)

店名の由来である「姿(勢)なり」とは、日本本来の文化や習慣がカジュアル化しつつある現代だからこそ、本来の日本の姿を表現していく姿勢、という意味が込められている。

店内の様子 紫苑
(写真左):玄関や廊下、床の間など至るところに飾られた豪華絢爛な着物たちは、まるで贅沢なタペストリーのよう。食事前の目へのごちそうだ
(写真右):細かく仕切られた個室主体なので、ゆったりと過ごすことができる。それぞれの個室は、「萌黄」「紫苑」「青磁」「琥珀」など、着物の染め粉にちなんだ名称。お1人さまから20名の団体まで、あらゆるシーンに対応できる。写真は、紫苑(2~4名用)

そのため、料理も流行りの創作などではなく、伝統的な技法にのっとって旬のものをいただく、本物の和食。料理に対する真摯な姿勢が感じられる。

日本人でありながら、懐石というと格式ばった先入観を持ち、なぜか恐縮してしまう。しかしこれは、従来の料亭が、どちらかといえば商談や芸鼓遊びなど男性主体の店が多いせいかもしれない。その点でも『しなり』は、老舗料亭とは一線を画す。老舗にありがちな、威圧的で猛々しい空気は一切感じられない。事実、サロン的に利用する女性客が多いため、店づくりも女性視点。お手洗いには着物のお直し室が設けられているほど、女性への細やかな心遣いが感じられる。

佐藤祐さん

慣れない着物や浴衣が着崩れて、薄暗いトイレの中で四苦八苦しながら整えた経験がある人も少なくないだろう。でも、ここなら自分で直すのもよし、着付けの心得があるスタッフに直してもらうのもよし、安心して着物で訪れることができる。 また、まだ着物を持っていない人も、レンタルと着付けを行なってくれるプランがあるのでご安心あれ。呉服店が母体なので、そのクオリティの高さは言うまでもない。着物で神楽坂を散策し、仕上げに美味しい懐石をいただくという極上のコースを利用し、生まれ持っているはずの“和の心”を刺激して、とことん情緒にひたってみてはいかがだろう。

(text/miho sasaki、photo/chikahito nagai)

(写真右):「最初は緊張しているお客さまも多いですよ。でも難しいことは何もないですし、わからなければどんどん質問してください。日本文化をもっと身近に、気軽に楽しんでほしいですね」とサービスの佐藤祐さん。そのひと言を聞けただけで、なんだか一気に敷居が低くなった気がしてうれしい

しなり

東京都新宿区神楽坂3-1 
Tel:03-5227-4772
営業時間:ランチ  11:30~14:00(LO 13:30)
ディナー 17:00~23:00(LO 21:00)
定休日:日・祝日(お盆時期休業日あり)


JR飯田橋駅もしくは東京メトロ神楽坂駅より、毘沙門天を目指して緩やかな坂道、神楽坂通りを上る。途中、右手にある「サークルK」を右折。二本目の石畳の小路を左折したところにある竹塀の一軒家

【その他の人気メニュー】
・ランチコース(予約のみ)  ¥4,800、¥5,800
・コース ¥10,000、¥12,000、¥15,000
・しゃぶしゃぶコース ¥8,000

下町的な商店外が並ぶ神楽坂通りを1本脇に入っただけで、石畳の路地が続き、情緒豊かな空気感に変わる。夜になると芸者さんたちの艶姿が見かけられるのも、粋な雰囲気を盛り上げてくれる

バックナンバーを見る

このページのトップへ戻る

バックナンバー

バックナンバー一覧


サイト内検索