

世界三大料理のひとつである中国料理。ひと口に中国料理といってもその広大な国土と悠久の歴史から、北京、広東、四川、広州など地域色豊かな料理として独自に発展してきた。今では、世界中の人々が認めるポピュラーな料理として親しまれているのは言うまでもない。それでも、まだ私たちの中国料理のイメージといえば、派手な赤いインテリアの中で円卓を回しながら、大勢でワイワイといただくというもの。そんな陳腐なイメージを払拭してくれるのが、根津にある『古月』だ。
(写真上):「国産活け車海老とマコモ茸の炒め物」。大きな海老のプリプリ感とマコモ茸の歯ごたえを楽しむために、シンプルに味付けられている(9月の¥6,500コースより)。月替わりコースは¥6,500と¥8,500の二種
根津といえば古くは多くの文化人や学者が住まい、最近では谷根千(谷中・根津・千駄木)と呼ばれ、そのノスタルジックな雰囲気で注目されているエリアのひとつ。昔ながらの情緒が残る根津で、とりわけ趣のある『山中旅館』内に『古月』は在る。まさか、ここに中国料理店があるとは思うまい。その意外性もエンターテイメントで、自然と期待に胸がふくらむ。
昭和5年に建てられた和洋折衷なモダンな旅館は、総料理長・山中一男氏の生家なのだという。
(写真左):20年代の上海を彷彿させるシノワーズな個室は、なんと山中氏が少年時代を過ごした元子供部屋!
(写真右):和室はゆったりと気負わない雰囲気なので、家族や親族との食事会の場として活躍してくれる
学生時代、中国文化に魅せられ、中国料理への道へと進み、有名店で修行をした山中氏が、ヌーヴェル・シノワが楽しめる店としてオープンさせたのが10余年前。旅館の名残が感じられる個室にて、北京や広東など各地の食文化を折衷した料理を会席風にいただける。中国料理らしからぬ穏やかな雰囲気と、山中氏が提案する繊細な料理。財界人をはじめ多くの著名人たちやグルマンたちが足を運んできたというのも納得だ。

また、山中氏は中国政府認可の「栄養薬膳大師」という資格も持つため、薬膳の考えに基づいたメニューを得意とする。薬膳というと漢方薬が入っている料理と思いがちだが、それは大きな間違い。最適な栄養を摂り、病気を未然に防ぐ料理のことである。私たちの体調は季節によって微妙に変化を来たし、必要とする栄養素も変わってくる。それらを自然とカバーしてくれるのが、2000年以上の知恵が詰まった料理なのだ。繊細な見た目と確かな美味しさの中に、美容と健康の源があるのだから、女性にはたまらない。
(写真右):「豚スネ肉とクレソンの養生スープ」。乾燥クレソンでとっただしは、少しクセはあるが滋味あふれる味わい。瓜の淡白な冬瓜と、ほろっと口の中でくずれる塩漬けの豚スネ肉との相性も絶妙。レッポという独特な鍋で供されるので冷めにくい(9月の\6,500コースより)
レトロで落ち着いたムードの中で、身体にやさしい中国料理をいただけば、今年の猛暑で疲れた身体と心が癒されることは間違いないだろう。季節の変わり目ごとに訪れたい一軒だ。
(text/miho sasaki、photo/fumio ando)
(写真右):山中一男さん。四川飯店で修行後、研修生として北京、広州などに派遣され、中国各地の料理を習得する。『古月』で腕をふるう傍ら、(社)日本中国料理協会理事、中華中医薬学会栄養薬膳専家分会理事、調理技術技能評価試験中央試験委員として、若手の育成にも力を入れている。「他店にはない雰囲気の中、身体にやさしい中国料理を楽しんでください」とのこと
古月
東京都台東区池之端4-23-1
Tel:03-3821-4751
営業時間:ティータイム 12:00~17:00(LO 15:00)
ディナータイム 17:00~22:30(LO 20:00)
定休日:不定休
東京メトロ根津駅より徒歩約5分、言問通りをJR鶯谷駅方面に向かい、三本目の路地を右折。JR京成上野駅からだと途中に「下町風俗資料館」「牡丹園」「森鷗外旧居跡」があり、のんびりと散策しながら向かうのも楽しい。新宿御苑に姉妹店がある
【その他の人気メニュー】
・ ティータイムメニュー ¥3,900、¥5,800、¥8,000
・ ラムのしゃぶしゃぶコース(12月~) ¥10,000
・ すっぽんコース ¥10,000、¥12,000、¥15,000
・ 特大フカヒレの秘製土鍋コース ¥15,000
・ 熊の手の煮込みコース ¥20,000









