梅雨が明ければ夏本番、仲間とわいわいバーベキューするのも楽しい季節の到来だ。アウトドア料理をグレードアップさせるのに欠かせないのがダッチオーブンだが、この豪快な鍋を使った料理がスーツ姿のビジネスパーソンが闊歩する、日本橋でいただけると聞いて驚かない人がいるだろうか? 日本橋三越前に2009年2月にオープンした『stove(ストーブ)』は、“インドアでダッチオーブン”という、コンセプトが異彩を放つ料理店だ。
(写真上)丸ごと2匹のカジカが迫力満点。ハーブの香りが食欲をそそる。ラディッシュや茄子、小松菜といった野菜はほとんど火入れしていないため、野菜本来の味を楽しめる。『茨城県産カジカの香草焼き』¥1,500

日本橋三越本店を背に、むろまち小路の路地を入っていったところに店はある。元々はギャラリーだったというだけに木の扉が印象的で、仕事の疲れを忘れさせてくれる空間にふさわしい。
ダッチオーブンを店のコンセプトとしたのは、アウトドア好きのオーナー・石川雅昭さん。素人料理でも美味しくできるダッチオーブン料理をプロが手がけたらどんな味になるのだろうというアイデアが、日頃から調理方法に利点があるとしてダッチオーブンを愛用していたシェフの堀井貴之さんの腕と融合して生まれた。
「ダッチオーブンは豪快というイメージがありますが、それだけじゃない。鋳鉄を使っているので熱伝導率がよく、例えば野菜を調理するとき無水鍋として使うと、栄養分はそのままで、野菜の繊細な味を引き出すことができます。豪快さと繊細さ、そのバランスをうまく取ることが、ダッチオーブンを光る料理に変えるコツです」とは、シェフの堀井氏。
その光る料理の繊細な一面を体現しているのが、ここの野菜。それもそのはず、千葉県八街の農家にお願いして、シェフ自らが厳選した苗や種から育ててもらっている野菜を中心に、旬の美味しい食材を日本全国から取り寄せているからだ。故郷の茨城にあるシェフの畑では、ズッキーニ、赤ピーマン、モロッコインゲン、メークインなどを栽培。農家と協力し品種改良しながらオリジナル野菜を作るという試みにもチャレンジしている。調理法や味付けはシンプルだからこそ、食材の持つ力、そしてプロの腕前が際立つというもの。ここまで徹底的にこだわった野菜料理をたっぷり食べられるのは、なんと贅沢なことだろう。お肉もコレステロールが普通の豚肉の3分の1ほどの沖縄系の豚や、脂身が少ない和牛のハツ、うま味が強い牛ホホ肉などこだわりのものばかり。その日その時に美味しい食材が入った看板には、サメの心臓や生で食べられるダチョウなどなかなかお目にかかれない食材も並ぶ。
食材のクオリティとは裏腹に、メニューを見ると値段はお手頃。これなら女同士の利用客が多いのも頷ける。
そして料理が運ばれてくると、これまたダッチオーブン料理ならではの演出が感動的。五感が一度にぎゅっと刺激され、その心地よい快感に浸りながら、食べることは生きる喜びなのだと思い至るに違いない。
しかしもう一度思い出して欲しい、ダッチオーブンとは元々、アメリカの西部開拓時代に荒野を旅するカウボーイたちが携えていたアウトドア用の鍋であることを。高級フレンチでもなく、瀟洒なイタリアンでもない。格好などは気にせずに、ありのままの美味しさを心の底から楽しむことができる。この夏、プロのインドア・ダッチオーブン専門店にデビューしないと後悔することになりそうだ。
(text / yuko kotani、photo / shiori kawamoto )
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stove ストーブ
東京都中央区日本橋室町1-11-5
Tel:03-5202-4580
営業時間:ランチ11:30-14:00/ディナー17:00-23:00
定休日:日曜日
席数:20席
店頭メニューボードに日替わりのダッチオーブンメニューがずらりと掲載されている。オリジナルのダッチオーブン料理のほか、自家製ハム&スモーク盛り合わせ¥800〜、本日鮮魚のカルパッチョ¥800、石垣豚とホロホロ鶏のパテ¥650なども人気。ワインはイタリア産がメイン。すべてシェフ自らが選んだモノで、1本¥3,000〜¥5,000のものが主流。
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