小、中学生の音楽の時間、壁に貼ってある無気味な音楽家の肖像画を見ながら様々なクラッシックの名曲を聴かされたのを覚えている。
バッハ、ハイドン、モーツアルト、ベートーベン、チャイコフスキー。当時この音楽家たちの偉業をどこまで理解できたのだろうか。
理解とまではいかないまでも、あの悪い夢に出て来そうな肖像画とヘアースタイルとが確実に僕の記憶に刻まれている。
中でもベートーベンは特に印象深かった。
「第九」とか「運命」なんかの激しいものより「エリーゼのために」の美しくて繊細で切ないメロディーが子供だった僕の琴線にも触れたのだ。
しかし成長し大人になって多少クラッシックを聴く事はあっても特にベートーベンに興味を持つ事は一度もなかった。
無意識のうちに何度となく耳に入り、メロディーさえ口ずさむ事ができる程のこの曲に、ある作品に出会うまではまったくの無反応であった。
ガス・ヴァン・サント監督の映画『 エレファント 』。
この映画は1999年アメリカのコロラド州の高校で実際に起きた有名なコロンバイン高校銃乱射事件をモチーフとした作品である。
事件のショッキングさとは裏腹に冷静に淡々と進んで行く構成は素晴らしく、カンヌで監督賞を受賞している。
映画中盤に乱射事件の犯人である高校生が自分の部屋のピアノでベートーベンの「エリーゼのために」を弾くシーンがある。その聴き慣れた当たり前のメロディーが限り無く美しく悲しく本当に新鮮に響いた。 |