music感動のグラデーション 賞味期限は永遠なり

大学生だった僕はこのアルバム(当時はレコード)を擦り切れる程聴きました。コピーしてバンドでも演奏する程のお気に入りだったのです。10年後、洗練されたポップスを毛嫌いしていた30代前半でさえ、偶然に、またかなり久しぶりに耳にしたこのアルバムに(当時としては)不覚にも感動してしまった記憶があります。さらにまた10年、40代になった今もやっぱり感動してしまうんですね。大学生の頃と同じように胸が締めつけられる自分が可笑しくもあり、嬉しくもあり。

多感な時期に聴いていたものですから所謂「ナツメロ」としても機能しているのでしょう。 まぁ「懐かしい」ってやつですね。けれども大学生当時に同じようにお気に入りであった音楽でも、10年、20年を経て同じような感動の「質」と「量」を提供してくれることはそう多くありません。(というかほとんどない…というかあったら奇蹟かも)

で、このアルバムは間違いなくその「奇蹟」なんです。 奇蹟の理由を考えてみますね。

1. 全てが良い曲である。
収録されている曲が全て良い曲であるアルバムなんてほとんど存在しません。これこそ奇蹟なんですけど。

2. 普遍的(不変的)>時代
その音楽のトピックが時代に寄り添いすぎると、時代が変わった瞬間に恥ずかしくなっちゃいます。

3. 制作者の一番のモチベーションが「良い音楽を作りたい」である
僕はその現場にいたわけではないので「多分」ですが、そうだと思います。ヒットであるとか、作品の意義とかではないんです。曖昧で、ある意味青い言い方ですが、長く愛される作品は必ずそういった状況でできあがります。

とにかくこんなに「賞味期限」の永い作品は少ないですよ。何度も聴くうちにグラデーションのように感動が広がることでしょう。その感動は尽きることがありません。そして何故だか人生がちょっとだけ豊かになったように感じられるかも知れません。僕はそうでした。


参加ゲストにCHEMISTRY、SOULHEAD、高橋幸宏+大貫妙子、田中拡邦(MAMALAID RAG)、山本領平、YOSHIKAなどを迎えた豪華アルバム。名盤との呼び声も高い、冨田ラボ渾身の超自信作。

冨田恵一(冨田ラボ)

音楽プロデューサー。1962年6月1日北海道生まれ。 音楽家の母の元、幼少時より音楽教育を受け、小学校高学年よりポップスに興味を持ち作曲を始める。獨協大学在籍時からミュージシャンとしての活動を始め1988年、自己のユニット「Kedge」による『COMPLETE SAMPLES』をリリース。1988年以降は作編曲を中心に活動、その後「キリンジ」を始め、MISIA「Everything」、平井堅「RING」、中島美嘉「WILL」「STARS」、他、数多くのアーティストプロデュースを手掛ける。 2003年、自身のセルフプロジェクト“冨田ラボ”としてソロアルバム『シップビルディング』(東芝EMI)をリリース。松任谷由美、ハナレグミ、キリンジを向かえた話題作となる。 2005年、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコードに移籍、そして迎えた今年2月に待望のアルバム第2弾『 Shiplaunching 』をリリースした。

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