music自分が今ここに居る理由のヒント

音楽をゆっくり聴くなんて機会も減り、DJ世代(敢えてそう書かせていただく)としてはアルバム一枚をじっと聴いていることも少なくなったが、この『一年間』は今でも通して聴かずにはいられない。

ゾンビーズを脱退した後、音楽業界から離れ保険外交員をやったりしていたコリン・ブランストーン。名義を変えたり、迷いもあったのだと思うが、本名に戻しての「再出発」。そんな自身の一年間の物語そのものだというアルバム。どうしても保険外交員だった時期の彼の心境に思いを馳せて聴いてしまう。 私自身、十数年前のバンド解散後、短いながら会社員をやっていた時期がある。いろいろあって結局戻って来てしまったが、当時は音楽業界を離れようと思っていた。その心境はいまでも理解できる。むしろ「どうして戻って来てしまったのか」が不思議なのだ。我ながら。

そんな時期に聴いたこの『一年間』に溢れる弦楽器、いわゆるストリングスの音色。「スモーキー」という言葉だけでは形容し切れない彼の声を包み込むように交わる線と線。この音色と素晴らしいアレンジが私を今居る場所に引き戻したある種の要素であることは間違いない。 それは結局のところ「やり残したこと」だったのだろうか。今ではスタジオでその音色を生で聴いている。ヴァイオリンやチェロ奏者の弓の動きと、自分で書いた譜面を目で追いながら、いつもなにかを思い出す。私がここに居る理由のヒント。

彼のその後、つまり「再出発」以降の道程がどんなものであったか私はよく知らないのだが、このアルバムのあとのコリン・ブランストーンは「音楽業界で大成功した」とは言い難い。成功? いや、そんなの今となっては本人の捉え方だけが重要なのだろう。迷った時期の結果としてこのアルバムを現に残し、当時は売れなかったにせよ、少なくともあのときの私の心に、なにかを投げかけてくれた。そして今でも、彼の歌声は私にとってまさしく理想である。

私自身、この場所に戻って来たのが正解だったのかは判らない。あのまま会社員をやっていてもそれなりに幸せだったのだろう。自分にとってどれが本当の道なのか。或いはそんなことどうでもいいのかも。テレビをつけるたび「夢を決してあきらめないで」みたいに言われるが、あきらめたり、流されて生きることは罪悪ではあるまい。迷ったり、いろんな景色に惑わされて生きていくのも悪くないと思うのだ。

ちなみにこれは1971年のアルバム。
私が生まれた年である。(text/ Dan Miyakawa)

電気楽器を使わない新しい形のJ-POP

コンポーザー宮川弾のソロ・プロジェクトが始動! 
安藤裕子、太田裕美、清水ゆみ、土岐麻子…etc.といった人気派ヴォーカリストを迎えて制作された大編成の楽曲達。これらは“電気楽器を使わない”というユニークな発想で創られた、現在のJ-POP界におけるニュータイプです。

2006年10月25日 IN STORE

宮川弾/Dan Miyakawa

1971年6月12日生まれ、東京都出身、双子座、B型。
Fantastic Plastic Machine「beautiful.」(2001年)「too」(2003年)などの共同プロデュースをはじめ、数多くのアーティストのプロデュース、アレンジ、リミックスを手がける。 近年では、安藤裕子への楽曲提供「さみしがり屋の言葉達」「ドラマチックレコード」など作曲にも力を入れている。 クラブ・ミュージックからポップスまで、ストリングス・アレンジを主軸にした生楽器中心のアレンジには特に定評があり、2006年1月には、映画「スキージャンプ・ペア-Road To TORINO2006-」のサウンドトラックをアルバムとして発表。 2006年、"宮川弾アンサンブル"としてソロアルバム「pied-piper」を発表。

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