子供の頃、我が家にステレオが来た日のことを今でもおぼえている。スピーカーがやけに大きい家具調のステレオ。そして父親がレコードを何枚か買ってきた。どのような基準で選んだのか分からないが、クラッシックに混じって、カーペンターズ、ミッシェル・ポルナレフ、そしてセルジオ・メンデスのレコードがあった。
アメリカ、フランス、ブラジルと三者三様の音楽と言語。まだ英語も習う前の私は、その違いすらわからないまま毎日くり返し聴いていた。特にセルジオ・メンデスのダンサブルなブラジリアン・ミュージックは、子供心にまだ見ぬ遠い異国のイメージとして刷り込まれた。アルバムの中に収録されていた「AGUA DE BEBER」がお気に入りで、何度も繰り返し聴いてはカタカナに書きおこし、インチキなポルトガル語で歌っていた記憶がある。音楽を聴くことは子供の私にとって、遠いどこかに旅をするようなものだったのだ。

日本からもっとも遠い国ブラジル。当時は月旅行くらい遠く現実味のないものに感じていた。それから何十年も経過したわけだが、去年私の「月旅行」が実現した。ブラジルの“渋谷系”と呼ばれているPATO FUというバンドのリードシンガー、フェルナンダ・タカイさんからのラヴコールで、彼女のステージにゲストヴォーカルとして呼ばれたのだ。不思議だけど初対面のはずの彼女とは、旧くからの友人と再会したかのようにすぐに打ち解けた。音楽を通じて彼女とこうして出会えたことを、本当に嬉しく思っている。そして私達はふたりで何かやろう! ということになり、ミニアルバムをつくることになった。メールでやりとりをしながら、ふたりで選曲をして歌詞を書いて、日本語とポルトガル語で歌っている。
子供の頃、月旅行くらい遠い国だったブラジルで、シンガーとして歌を歌ったことには感慨深いものがあった。私はロケットではなく、音楽によって月まで行くことができた。
(text / Maki Nomiya)
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日本とブラジル、地球の反対側でそれぞれポップ・カルチャーを牽引して来た野宮真貴とフェルナンダ・タカイが共演! フェルナンダ・タカイのポルトガル語歌詞と野宮真貴の日本語歌詞でデュエットする「Nagoya」。母親という共通点を持つ2人の思いが詰まっているかのようなピチカート・ファイブの名曲「メッセージ・ソング」。ブラジルで行われたEletronikaフェスでの共演ライヴ音源でボサ・ノヴァ・クラシックの日本語版「Kobune(O Barquinho)」……言葉や国境さえ飛び越えた2人の才能の融合をお聞き逃がしなく!
野宮真貴とフェルナンダ・タカイ『MAKI-TAKAI NO JETLAG』
¥1,500 5曲入り 発売元:大洋レコード
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野宮真貴/Maki Nomiya
90年代、ピチカート・ファイヴのヴォーカリストとして国内外で活躍。現在はソロシンガーとして、音楽、ファッション、エッセイなど幅広く活動。第3回となるリサイタルを2009年9月22日に恵比寿ザ・ガーデンホールにて敢行。10月20日にはフェルナンダ・タカイとのコラボミニCD「Maki-Takai NO JETLAG」をリリースした。公式Webサイトでは動画やブログもあり、新しい情報も随時更新中。
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