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伊豆山温泉,蓬莱,ヴィラ・デル・ソル

伊豆山温泉,蓬莱,ヴィラ・デル・ソル

//後編//
やはりこの二つのお宿を語る上で、女将の存在は欠かせない。表現はあくまでさりげないながら、日本をはじめ他国文化への理解、そして伝統に縛られないモダンなセンスに裏づけされた細部への配慮が心地よく身にしみる。女将が手がけるしつらえには、時節を重んじ粋に楽しむ日本ならではの美学がちりばめられている。たとえば、宿の顔である玄関。元々お客だった現代美術家 李禹煥(リー・ウーハン)がこの玄関の寸法を測って作ったという屏風の前に配置されているのは、フラワーアーティスト ダニエル・オストのメスシリンダーのような形をした花器に挿されたオオデマリ、ススキ、リョーブ。宿の周りに生えている野草を生けることも多いという。「野山を散歩していて、季節を感じる草花に出会うと自分自身が季節の変化に気づいて、うれしくなりますでしょ。私は何にでも感動して、幸せな気持ちになるんですね。それをお客様にお伝えして共有したいと思いますね」。これは先の洋館移築のエピソードにも通じる、おもてなしの極意なのだろう。

(上写真)蓬莱の玄関

伊豆山温泉,蓬莱,ヴィラ・デル・ソル

隈研吾建築の「古々比の瀧」

さて、江戸と明治、二つの時空をつなぐ坂の途中には二つの湯殿が設えられている。湯は日本三大古泉に数えられ1200年あまりの時を湛える伊豆山温泉源泉の掛け流し。世界的建築家 隈研吾が手がけた「古々比の瀧」は最小限の壁をなくしたフラットな構造により、外界と身体とがダイレクトに触れるようで快い。一方、かつて温泉が海へと走るように流れ落ちていたためにその名がついたという「走り湯」は、一本の釘も使わずに檜で高く組み上げられており、ともに相模湾の紺碧の海を樹々の向こうに望み、開放感たっぷり。波音に耳を澄ませて目を瞑れば、海の中に浮き漂うような心地よい感覚が味わえる。

伊豆山温泉,蓬莱,ヴィラ・デル・ソル

蓬莱の夏料理より。氷の上に配された鮎の塩焼きとそうめん

そして海と山といえば楽しみなのはやはりお食事。「正直な料理」と蓬莱の料理長大谷 登さんが表すとおり、季節感を大切に、“走り”と“名残”をも含む“旬”の恵みを最大限に生かした日本料理は、けれんみのない誠実な味で、温かく緩んだ心身にじわっとしみわたる。さらに一つずつ女将により筆書きされた箸袋、敷紙によって至福感は一層高まるのだ。
一方、「畑が冷蔵庫」という金野茂シェフが腕を振るうヴィラ・デル・ソルのレストラン南葵文庫では、地の素材にこだわった南仏料理が味わえる。鮮度が高いからこそ実現できる色や香り、食感の多様な楽しみが豊かな野菜のあしらいにもご注目を。

一つひとつに思いがこもり、意味があり、必然的な美が宿る二つの宿。いつもそこにありながら、二度と同じ繰り返しなどない葉の模様と波の調べ。江戸時代、明治時代、そして現在を行き交う稀有な場で、一瞬にして永遠なる日本の美の真髄に浸りたゆたう体験をぜひ。

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伊豆山温泉,蓬莱,ヴィラ・デル・ソル

熱海伊豆山 蓬莱
静岡県熱海市伊豆山750の6
Tel:0557-80-5151
本館11室、離れ6室
¥37,000〜

蓬莱洋館 ヴィラ・デル・ソル 
静岡県熱海市伊豆山759
Tel:0557-80-2020
全7室
¥25,000〜

※料金はともに、1泊2食付、2名1室利用時の1名分。税およびサービス料込・入湯税別


右写真:蓬莱とヴィラ・デル・ソルを行き来する階段


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