老人介護の国際比較
老人介護の国際比較

日本において4月1日より、「後期高齢者医療制度」なるものが実行された。これまで配偶者や子ども世帯の被扶養者になっていた人たちにとっては新たな負担となる保険料が発生する。年金の記録問題も未解決のうちに、また、多くの保険未払い問題を残したまま、75歳以上の人たちたちの年金から天引きで保険料を徴収することに、私は甚だ疑問を感じざるを得ない。そこで、他の国々の高齢者に対する社会保険などはどうなっているのか調べてみた。

厚生労働省が公的年金の国際比較表を公表しているので、参考にしていただきたい。大方の先進国は所得に比例した保険料給付が中心となっている。面白いことに、日本とニュージーランドを除いた、他の先進諸国、アメリカ、カナダやスウェーデンでも、無職であった国民は社会保険対象外となっている。また、オーストラリアの制度は興味深いものがある。1992年以来、給与の8%が老後のために、強制貯蓄される制度を設けている。年金や所得の低いものには税金による老齢年金の補足給付があるというから、保障は厚いほうである。

データは1998年のもので古いのだが、参考までにGDP(国民総生産)に対する社会保障給付費を国際比較してみると、上位に上がってくるのがおよそ4割を占めるスウェーデンに続き、社会保障の厚い国として知られているフランス、イギリス、など欧州勢が続く。日本は1995年統計においては13.3%という数字でスウェーデンの3分の1程度にとどまっている。

制度による保障はさまざまであるが、その国の高齢者たちの満足度はどうなのか。内閣府発表の各国の高齢者の意識調査の報告書(日本、アメリカ、韓国、ドイツ、フランスの5カ国のみ調査対象)をみると、ドイツにおいては社会保障が十分なため、資産保有の必要性がないと感じている60歳以上の高齢者が11.1%いるうえに、7割近くの高齢者が老後の備えに不足を感じていないというから、老後の心配が少ない国だといえるだろう。対して日本は、老後の備えが不足しているとの回答が45.3%に達しているほか、8.2%の高齢者が「わからない」と答えている。日本以上に、不足だとの回答が多かったのが韓国で、こちらは不足している、との回答が65%にも上っている。日本と韓国のアジア圏では社会保障はまだ十分でないと感じている高齢者が多いようである。

同調査内で、日本の73.9%の高齢者たちが公的年金を主な収入源として、生活費をまかなっていると答えている。その大方の高齢者の収入源となる給付金額を調べると、75歳以上の男性のおよそ半数が200万円未満、女性の7~8割ほどが100万円未満となっている。90歳以上の女性に関しては半数以上の57.2%の人たちが50万円未満だという結果がでている(老齢年金受給者実態調査を参考)。

厚生労働省の試算によると、後期高齢者医療制度の発足時の負担は月額およそ6,200円、年間およそ75,000円の負担だ。収入源の少ない人々にとってこの金額は大きいはずである。各国の社会保障制度を比べてみると、本来では儒教精神の根付いているはずの日本や韓国のほうが、高齢者に対する処遇をおざなりにしているようで不思議でならない。お年寄りにとって日本は住み慣れた国であっても、住みにくくなってきていることは間違いない。

丹羽 康子/ Yasuko Niwa

英国オクスフォード大学で国際関係学を専攻し修士号取得。政治だけではなく金融知識も身に付けたいと帰国後、外資系証券会社に勤務する。日経CNBCにて経済キャスターを経た後、現在は茶道家としての活動をすすめる側ら、金融教育やキャリア教育などの講演でも活躍中。

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