世界の中の日本、未来の日本
最終回・世界の中の日本、未来の日本

日本は2009年6月、横浜開港150周年を迎える。19世紀半ばに開国して以来、100余年で欧米の列強と肩を並べるほどの目覚しい成長を遂げた。欧米の列強との戦争に発展してしまった第二次世界大戦を経た後は、ものづくりが国力を支え「先進国」の仲間入りをし、1975年以来の主要国首脳会議の構成国となっている。開国から150年を迎えようとしている今日、日本は太平洋の片隅にある小さな島国ながら世界有数の経済的に豊かな国へと発展した。いまは平和を満喫している日本だが、世界に眼を向けると平和と安定した生活からはほど遠い生活を強いられている人々がまだまだ多いことを忘れてはならない。

先月、国連食糧機構はバイオ燃料の急拡大や気候変動、そして原油高に伴う投機などを受けて食料価格が高騰したため、2007年に飢餓人口が約5000万人増大したと発表した。飢餓人口の割合はアフリカ東部、中央部、南部でもっとも高くなっている。そして意外にも、近年経済的に躍進し世界屈指の富裕層を築いているインドと中国での飢餓人口が高い。現在世界では8億人以上の人々が飢餓の状態にあるというが、中国(1億4210万人)とインド(2億2110万人)の2国だけでその半数近くを占めている。一方で、先進諸国を中心に世界の肥満人口が増加傾向にあるというから、世界の食糧事情でも二極化が進んでいることは間違いない。2050年にむけて世界人口は増加傾向にあるため、いまの食糧生産高を倍増させないと、飢餓人口が増えてしまうと国連は予測している。

しかしながら食料倍増は温暖化を加速させかねない、との見方もある。農業食品産業技術総合研究機構の研究によると「家畜糞の堆肥化処理からは、亜酸化窒素(N2O)という二酸化炭素(CO2)よりも約300倍も強力な温室効果ガスが発生」するそうだ。つまり、家畜の増加は地球温暖化を促進させる、という結論だ。国連食糧機構でさえも車から放出されている温室効果ガスよりも、家畜によって生じる温室効果ガスの方が多いと指摘している。日本は世界に誇る自動車開発でハイブリッドカーなどを先駆的に売り出したが、その一方で日本人の食生活も欧米化が進み、牛や豚などの肉を食すことが多くなった。日本が真に環境大国を目指すのであれば1億総勢、肉を食することをやめるように心がけていくことではなかろうか。伝統食に回帰することで、もしかしたら肥満人口の解消にもつながるかもしれない。

ところで「宇宙船地球号(Spaceship Earth)」という概念がある。地球を宇宙船になぞらえ人々は一つの船に乗った一員に過ぎず、お互いの協力なしでは操縦がうまくいかず宇宙船が沈んでしまうだろうことを示唆している。難民問題、金融危機、人口問題、環境問題、医療問題など多国間での協力なしでは解決できない問題が山積しているのは一目瞭然だ。次の半世紀後となる開国200周年のころには、今生まれてきている子どもたちが壮年期を迎える時代である。いつの世の中も争いは絶えず、苦しみから解放されない人々はいるが、せめて日本に住まう一人でも多くが「生まれてきて幸せだった」と感じられるような時代になっていれば、と思う。今の子どもたちが安心して暮らせる「地球号」を残すことこそがいまの大人たちが残せる最高の遺産ではなかろうか。

☆今回このシリーズの最終回をむかえましたが、4年近くご愛読くださったみなさまと製作に携わってくださったみなさまに心より感謝とお礼の言葉を述べたいと思います。本当にありがとうございました。

丹羽 康子/ Yasuko Niwa

英国オクスフォード大学で国際関係学を専攻し修士号取得。政治だけではなく金融知識も身に付けたいと帰国後、外資系証券会社に勤務する。日経CNBCにて経済キャスターを経た後、現在は茶道家としての活動をすすめる側ら、金融教育やキャリア教育などの講演でも活躍中。

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