前号に「THE BODY SHOP」の製品を購入することで、コミュニティトレード※をサポートすることになる、と書きました。
※コミュニティトレードとは・・・恵まれない先住民や女性グループ、小規模農家など、国際的な企業と取引することの少ない、小さな組織から良質な原料や製品を公正な価格で取引すること。

“いつものシアワセ、プラス、ほんの少し社会貢献”。
こんな貢献なら思い立った時にでき、その後何らかの責務が発生するわけではないので、手軽です。むしろ、これ以上の社会貢献をしようと思うのは、それなりの“きっかけ”を必要とするかもしれません。
私のきっかけは「連日報道される哀しいニュース」でした。
出産をした直後は、ホルモンのバランスが変わるために、また育児にも慣れていないために、気持ちが鬱になりやすいと言われています。
私が出産したのは2年前になりますが、その頃、長崎で中学生に駐車場から突き落とされて死亡した種元駿くんの事件が起こりました。その後も続けて母親のボーイフレンドにお腹を蹴られて亡くなった幼稚園児の事件など、死に至るまでの児童虐待が国内で相次ぎました。

時期を同じくして他の国の惨劇も、今のこの時期よりももっと頻繁にニュースに流れていました。
イラクへの攻撃、北朝鮮の飢餓に苦しむ人々、児童兵士として強制的に人生を捻じ曲げられたシオラレオネの子供達といったショックな報道を、連日の新聞やテレビで、目にしない日はありませんでした。 神経が過敏になっている時期、ニュースから追体験してしまい毎日号泣していた私は、落ち込み過ぎて“産後鬱”となってしまいました。
日本で安心の毎日を送り、食べることも育児も物質的には何ら困ることのない私ですが、一方で家族を殺され、戦火の中を逃げ惑い、理不尽な暴力や性的搾取を受け、時に子供を売らねばならず、病気の赤ちゃんを抱いて途方に暮れる母親の存在を、子供を持ったことでより身近に感じます。 私たちが日本で送るような、明日も今日と変わらない平穏な一日であると信じることのできる生活が「光」であるならば、明日の生活さえわからない「影」に苦しむ、私よりも遥かに若いお母さんたちに、少しでも寄り添いたいと思いました。

そこで“産後鬱”から脱却し、せめて自分の周囲を幸せにするためにと、NGOを通じて海外の子供を支援することにしました。
「私が1ミリだけ世界を幸せにする。」この気持ちが、マイナスな思考を仕事への情熱というプラス思考に変えてくれます。つらく哀しいニュースを聞いても、その1ミリの貢献を守るために、明日もまたしっかり仕事をしてちゃんと生きていこうと思えるのです。
今、私は毎月4,500円をワールド・ビジョン・ジャパンというNGO団体を通じて寄付しています。
この4,500円、というのが私の生活にはちょうど良く、普通に働いていればすぐに出入りする、あまり気にならない額なのですが、毎月しなくてはならないと思うと、ちょっと重みのある額なのです。その“ちょっと重い”感じを受け止めることで、無駄な買い物を控えようと思います。

私はミャンマーのタバウン地域の男の子、コー君のチャイルド・スポンサーとなりました。支援したいエリアを希望することもできるのですが、どこの国のチャイルドを選ぶか、つまりどこの国のチャイルドを選ばないかは苦渋の選択でしたから、あえて私はワールド・ビジョンにお任せしました。
コー君が家族と住むタバウン地域は洪水が多く、とくに雨季は毎年のように河川が氾濫し村は洪水に襲われ、多くの地域では住居や田畑が流されてしまうのだそうです。 でも6歳のコー君からは元気なお便りが数ヶ月に一度届きます。

「僕は毎日元気に、学校へ通っています。」
「先日は写真を有難うございました。今度は僕の家族の写真を送ります。」

手紙にはフサフサとした羽根の一本一本を見事に描いた鳥や、葉脈まで書いた植物の絵を添えてくれます。絵が得意な彼にクレヨンを贈ると、次の手紙ではそのクレヨンを使って素晴らしい絵を書いてくれるので、じゃあ今度は色鉛筆を贈ろうかしら、とワクワクさせられます。
フォスタープランもまた、支援地域から紹介された特定の子供と文通などでコミュニケーションを図れるシステムです。
ワールド・ビジョンと同じ時期に、私はここで翻訳ボランティアを始めました。2ヶ月に一度、フォスタープランからいろいろな国の子供達からの手紙が、英文訳付きで数十通届きます。日本 のフォスター・ペアレントが読めるようにその手紙に日本語訳を付けるのが私の仕事です。
その国特有のお祭り名など、たった一つの固有名詞がわからずに訳が進まず、四苦八苦することがありますが、フォスタープランからはお国事情を記した翻訳の手引きが支給されているので、その本と首っ引きで訳をつけていきます。
お金の支援はたくさん行うと負担が大変で、継続が難しくなりますが、2ヶ月に一度、手紙を翻訳する時間を貢献することでも、また新しい知識が増え、訳している私が手紙をもらっているような疑似体験ができ、楽しいものです。
私が毎月定期的に寄付をしようと思った“きっかけ”は自らの産後鬱からの立ち直りでした。

その後も、スマトラ沖地震による津波など大きな惨劇が発生し、そのたびにたくさんの哀しい報道を目にしました。
日本国内における児童虐待も、止まる気配はありません。人間の仕業とは思えないスーダンの惨状。
つらい。哀しい。でも今は、落ち込む前に、自分の家庭を明るく保ち、ミャンマーのコー君をがっかりさせないように支援を継続できるだけの精神力を持ち続けたい。

「たった1ミリの世界平和」そのお手伝いを、少しづつでも長く行うぞ、と思う決意が、結局のところ私自身を励ます、エネルギーとなってくれているのです。(text / Miwako Kuroda 写真提供 / World Vision Japan)

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