「今度、我が社で出した本です。」
神楽坂の料亭で講談社の方より手渡された本の表紙は、ベリーショートの眼鏡をかけた日本女性でした。
タイトルは「生きるって素敵なこと!」

この女性こそが、現在タイで2~14歳の子供30人とスタッフら約50人を支えるゴッドマザー、名取美和さんでした。生活面でも、情緒面でも、もちろん経済面においても一番親を必要とする時期に、親を亡くし(あるいは失くし)、HIVに感染しているため親戚にも引き取ってもらえずに孤児となる子供達に、一人の日本女性が立ち上がります。
それまで一度もボランティアをしたこともなく、自由気ままにシングルマザーとして生きてきたという名取さんが、まるで運命に導かれるように50歳を過ぎてからバーンロムサイを立ち上げ、当初はお手伝いのつもりが主催者となってしまう。寄付に頼るだけではなく、自立したホームにしようと、時々日本で子供達の作品である陶芸や絵画、現地のHIV感染女性たちが縫製したテディベアやホームオリジナルプロダクト(服、小物、アクセサリー)を販売します。

しかしそんな名取さんも初めからバーンロムサイを背負って立つ覚悟ができたわけではありませんでした。
毎日を必死で送り、エイズで両親を亡くした身寄りのないたくさんの子供達にご飯を食べさせる。その横で下痢をしている子供がいる。HIV感染により免疫力が低下している子供達には、精神面も身体面も安定できる環境が必要だ・・・
そんな思いが固まってきたバーンロムサイ設立の翌年2000年、初めてホームの子供が亡くなりました。
ブットという2歳のその子の亡き骸を名取さんが病院に引き取りに行くと、職員に当然のように「孤児だから置いていくんでしょ」と言われてしまいます。タイでは、無縁仏はまとめて野原で焼くのだそうです。
「いいえ、ブットはうちの子です!私が連れて帰ります。」
思わずそう叫んだ名取さん。
このような経験を積みながら「子供達はみんな、私の家族なんだ」という思いを固めていったそうです。

その後もバーンロムサイでは何人かの子供達がエイズを発症して亡くなりました。発症を遅らせる薬は高価で、副作用も心配されます。
検査代と薬で一人月額1万8000円かかります。しかしバーンロムサイでは、この薬の導入に踏み切りました。以降、子供達は一人も亡くなっていません。
 
今回、この記事を書くために日本でバーンロムサイの事務局長を務める馬場容子さんにお会いしました。
verita世代の馬場さんは雰囲気の柔らかい素敵で美しい女性。 馬場さんに子供達のエピソードを語ってもらいました。
馬場さんは、2001年に2ヶ月ほどバーンロムサイに滞在し、ボランティアとして実際に子供達と生活を共にした経験があります。
その当時8歳ぐらいだったスラチャイは絵の上手な男の子。ヘルペス感染のため(皮膚が湿疹に出てきたために)、他の子どもたちから隔離されて馬場さんと一緒に過ごしていた時のこと。
馬場さんと絵を描いていたスラチャイは、彼女の絵を描いている途中で突然泣き出してしまいました。母親から動物園で捨てられていたスラチャイは、馬場さんの顔を描いているうちにお母さんを思い出してしまったのかもしれません。
表面上は明るい子どもたちなのですが、心の奥底には深い想い(傷)があるのでしょう。馬場さんがその時できたこと。それは大粒の涙を流しているスラチャイのそばに、ただ一緒にいることだけだったそうです。
3歳のダーオはおしゃまで明るい女の子。
バーンロムサイに来た時「私は何でもできるのよ」と自慢していました。
実際は、それまで誰も家族が彼女に触れようとしなかったために、彼女は身の回りのことを自分で何でもやるしかなかったのです。
HIV感染者への誤解や差別は、色濃く子供達の生活に影を落としています。
HIV感染者への正しい知識と認識は、タイでも大きな課題のひとつです。まだ皮膚同士の接触で感染するなどの誤解があるため、子供達は学校で仲間はずれにされたり、近所の子供達と一緒に遊べなかったりします。
バーンロムサイでは、今年から近所の人たちへ正しいAIDSの知識と理解を促すようにしました。
それはバーンロムサイの子供達のためばかりでなく、新たなHIV感染者の増加を防ぐことにもなるからです。
寄付に頼るホーム運営は経済的に不安定。子供達にとっても寄付だけに頼って生きるのは精神的にも良くないため、バーンロムサイではなるべく自立できるようオリジナルプロダクトの製造、販売を始めました。
バーンロムサイでは、子供たちの陶芸や絵画、AIDS患者の女性たちと一緒に作ったテディベアなどを日本に持ってきて時々販売会を行います。タイの山岳民族であるカレン族とバーンロムサイが共同でオーガニック・コットンを育てる「綿花プロジェクト」も実施中。
今後は素敵なコットンのアイテムに出逢えるかもしれません。 今夏は下記の日程で行いますので、時間があったらぜひのぞいてみて下さい!
日本のHIV感染者も増加を辿る一方。そこでバーンロムサイでは女性も持ちやすいコンドームを販売。デザインはトンパ文字研究者の先駆者で、アートディレクターとしても名高い浅葉克己氏。
アートディレクター 浅葉克己氏
コピーライター:岩永嘉弘
◆主な販売会&パネル展示
日本橋高島屋 7月27日~8月1日「UNDER THE TREE」展
髙島屋大阪店(なんば) 8月17日~23日
BLUE MOON 一色海岸・神奈川県 販売 7月1日~8月31日
麻布十番祭り 販売  8月19日~21日
◆パネル展示のみ
横浜髙島屋 7月20日~25日
バーンロムサイ ジャパンでは常時、賛助会員を募集しています。年会費は個人及び団体単位で一口10,000円。
会員になると感謝状とニュースレター(年2回発行)、展示会のお知らせが送られます。入金されたお金は全額ホームの子供たちのために使われます。
申し込みはオフィシャルサイトから!→ http://www.banromsai.jp
日本で何気なく使ってしまう小額のお金も、チェンマイではその何倍もの価値があります。
振込みは下記の口座に御願いします。
郵便局  口座番号:00170-1-122632 口座名:バーンロムサイ ジャパン
バーンロムサイでは、2005年6月時点で下記のものが不足しています。
●靴下、下着  サイズ 2-13歳 男女問いません。
●子ども用歯ブラシ 2歳‐小学校高学年用
靴下、下着、歯ブラシは新品を御願いします。 verita編集部に7月25日必着で送って頂ければ、編集部で仕分けをし、責任を持ってバーンロムサイにお渡しします。verita編集部までの送料は各自ご負担を御願いします。

〒103-0015
東京都中央区日本橋箱崎町20-1 アンソレイエ6F
株式会社カフェグルーヴ verita編集部「バーンロムサイ」係宛て
TEL:03-5649-8220
今夏、髙島屋で、子供達のとびきりの笑顔に会いに行きましょう!
気に入ったものがあれば、それを購入するだけでバーンロムサイの運営資金になります。何も買わなくてもパネル展示を見てバーンロムサイへの理解を深めれば、きっとそれが心の中に一粒の種となって残り、いつか・どこかで・何かの時に・芽をのぞかせるかもしれません。 素晴らしい目をした子供達の笑顔は、日本の私たちをも勇気づけてくれることでしょう。
バーンロムサイ オフィシャルサイトはこちらから →  (text / Miwako Kuroda 写真提供 / ban rom sai)

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