ウォーホルの最後の弟子ともいわれ、強烈で魅惑的なカラー写真で世界的なフォトグラファーのデヴィッド・ラシャペル。ファッション写真はもちろん、ユニークでファニーなポートレイトでは数多くのセレブリティを魅了し常に第一線で活躍。その彼が、全米で最も危険といわれる地区、L.Aのサウス・セントラルで出会った、地球上でもっとも熱く、激しく攻撃的なダンス “クランプ・ダンス”のドキュメンタリー映画『RIZE<ライズ>』を初監督。約3年の年月をかけ製作されたドキュメンタリー。来日したデヴィッド・ラシャペル監督に、作品にこめた思いを語ってもらった。
監督の映画の冒頭でのメッセージで「この映画の中のダンスは早回しではありません」とあるように、目がくぎづけになってしまうほど激しいクランプ・ダンスは人間がここまで身体を動かすことのできるの?!と、神秘と驚きを与えてくれる。監督がクランプ・ダンスを発見したきっかけは何だったのだろう?
「僕が初めてミュージック・ビデオを製作した時に、友達がサウス・セントラルのダンサーを連れて来た事がきっかけだった。正直、クランプ・ダンスを初めて見た時は開いた口が塞がらない…それくらい凄かった。彼らがダンスに向ける、前向きな精神を正真正銘な物として見せたかった。このアメリカという国の中に僕の常識には存在しなかった生活があったんだ」。
常に死と隣り合わせのこの街では、踊るか? それともギャングの一員になるのか。そんな厳しい生活のなかで若者たちは希望をもって克服して、アートのようなダンスを生み出していく。『RIZE』<這いアガる>……そんな境遇の彼らに監督が惹かれたワケとは?。「そもそも始めはダンスに惹かれて、その後踊っている彼らの人生を知れば知るほど、ダンス自体が更に意味のあるモノに変わっていったんだ。彼らのおかれた状況は厳しく、育つ中でどのギャングに属すのか、属さないのか?と選択を迫られたり、家庭が崩壊している子供たちはたくさんいる中で、彼らはそういった状況に負けるのではなく、何かポジティブなものに変え踊りを生み出しているんだ。最終的にはそういった克服していく彼らに惹かれていった。そしてクリエイターとして、何か作る機会があるのなら、フィクションであれ、ドキュメンタリーであれ、”偽者”は作りたくなかった。この作品にでてくるのは、真実のヒーローだけ。彼らはネガティブな状況のなかで、ヒロイックな選択をしている。だからこそ、僕は彼らがヒーローだと思うんだ」。

映画に登場する子供たちの踊りは、一度みたら忘れられないほどの衝撃、人間の肉体美にただただ感動してしまう。そして観ていると身体を動かしたくなってしまう映像でもある。監督も一緒になって、踊りだしたくなったのでは?「NO(笑)!! 以前マドンナがクランプ・ダンスをビデオで取り入れたり、アメリカではクランプ・ダンスをダンス・トレンドとしてとらえがち。でも、クランプ・ダンスはもっとスピリチュアルなもの。彼らはある意味アスリートたちと同じで、素人がクランプを踊るということは、たまにしか自転車に乗らない人が、ツール・ド・フランスに挑戦するくらい無謀なこと。全くダンスをしていないひとがいきなりクランプを踊るのは不可能なんだ。
でも、体を動かしたくはなるかな(笑)。クランプの素晴らしさは、実はいろんなことを受け入れられるということ。自分の中にあるアーティストの部分にリンクできている瞬間をクランプネスと表現するんだ。ダンサーは僕のことをクランプ・フォトグラファーって言っていたんだよ。だから、クランプになることはある意味、誰でもなれるんだ」。アメリカの社会を鋭く描いたドキュメンタリーでありながら、決してネガティブではなく、前向きに生きていく若者たちを見ているだけで、わたしたちの身体も心も熱くなる映画だ。
デビッド・ラシャペルは、1969年、コネチカット生まれ。ニューヨークに移る以前、ノースキャロライナ芸術学校で美術生として学んだ後、アーツ・スチューデント・リーグとスクール・オブ・ビジュアル・アーツの両校に入学。卒業後、アンディ・ウォーホルのファクトリーで実力を磨き、「インタビュー誌」で初めてのプロとしての仕事をオファーされる。ファッション・フォトグラファー、コマーシャル、ミュージック・ビデオの作品を発表し続け、最近「アメリカン・フォト」によって、世界で“最も重要な写真界の人々”のトップ10の中にランクインした彼は、多数の賞を獲得し続けている。
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監督:デヴィッド・ラシャペル
出演:トミー・ザ・クラウン/タイト・アイズ/ドラゴン/リル・シー他サウス・セントラルの若者たち
劇場情報:1月28日(土)よりシネマライズ他にて全国順次公開