プロトコールの第一人者、畑中由利江さんインタビュー

「プロトコール」という言葉をご存知だろうか。「外交儀礼」「外交マナー」という意味を持ち、欧米の上流社会では常識とされている“たしなみ”のひとつだ。こう聞くと、特別な人たちにだけ必要なものだと思われがちだが、実はそうではない。

「プロトコールは、自分の振る舞いに自信を持つための知識。決して堅苦しいものではありません」。そう話すのは、日本におけるプロトコールの第一人者、畑中由利江さんだ。急速に国際化が進む社会の中で、どこに出ても恥ずかしくない自分になりたいと望む人々を対象に、日本でフィニッシング・スクール“エコール ド プロトコール モナコ”を主宰。テーブルマナーから、人と接する際の心遣い、優雅な立ち振る舞いなどを指導している。

「プロトコールは、国際間のマナー基準。最上のマナーではありますが、それを知っていれば、どんなシーンにも適応できます。ファッションでも、マナーでも、一番上質なもの、一番素敵なことを知っていれば、それをTPOに応じて崩すことは可能です。知っていて崩すのと、知らずにマナー違反をするのとでは、大きな違いがありますからね」。

[写真]畑中由利江さん
あひるの子がモナコセレブへ成長を遂げる、それがプロトコールの魔法なんじゃの。

きっかけは"ひとりでも多くの女性を輝かせたい"と願う気持ち
畑中さんの住まいは、世界有数の観光地モナコ。世界のセレブリティたちが集う華やかな国で、フランス人のご主人、愛息と暮らしている。晩餐会やパーティが毎晩のように開催されるその地で、今や多くのセレブリティと交流を持つ彼女だが、子供時代は自分の容姿に自信が持てず内気だったという。

そんな畑中さんが自分を磨くことで世界が広がるということに気づき始めたのは高校生の頃。語学を学び、映画を観るなど、内面を豊かにする努力をしたという。そして大学卒業するとすぐ、スイスのフィニッシング・スクールに留学。各国から集まった良家の令嬢たちとともに、礼儀作法や女性としてのたしなみ、つまりプロトコールを学んだのだ。あひるの子から白鳥へ。華麗なる変身を遂げた彼女は、自分が変わることが出来たのだから、誰だって変わることが出来るはずだと感じたという。

スクールを始めたのも、日本でひとりでも多くの女性を輝かせたいと願う気持ちから。自らの経験が生かされているからこそ、指導はわかりやすく実践的だ。

プロトコールは、その場を楽しむための究極のコミュニケーション術
今は、スクールの運営のため、モナコと日本を往復する毎日を送る。そんな超セレブ生活を送る彼女に、プロトコールの極意を尋ねるとこんな話をしてくれた。「さまざまな人たちと同じ時間、同じ場所を共有する中で、いかに気持ちよく過ごすか。それを大前提としたものなのです」。

とはいえ、パーティや高級レストランなどで心から楽しみたいと思っても、場慣れしていないせいか、ついおろおろしてしまうという経験を持つ読者も多いだろう。だが、畑中さんは、「食事に出かけたのなら、お料理を作ってくださった方に感謝し、味を楽しむ。そして、会話を楽しむことが一番大事」と話す。「自分がそこにいるのは何のためなのかを考え、知ることが大切なのです。もちろん、正しいマナーを身に着けておくことも必要ですが、それに気をとられるあまりに、本来の楽しみが台無しになってしまうなんて残念なことだと思いませんか?」

プロトコールはそうならないための心強い味方なのだ。つまり、人との付き合いを円滑にし、楽しみを最大限に広げてくれる“きっかけ”であるともいえる。「プロトコールは、人に知識を見せびらかすためのものではありません。

たとえば、自分がプロトコールを身に着けているからといって、同席している相手にプレッシャーをかけるようなことは本来の目的に反します。緊張している人がいたら、その緊張感をほぐして差し上げる。マナーに迷っている相手を見つけたら、会話の中でさりげなく教えて差し上げる。そういう心遣いが大事です。ですから、パーティなどを開いたとき、プロトコールを身につけた素晴らしいホストは、ゲストたち皆が楽しんでいるか、きちんと気配りができる。つまり、究極のコミュニケーション術なのです」。

わしも昔、社交界のマナーを意地悪オヤジに馬鹿にされたものじゃ。やつは本当のホストじゃなかったんじゃ。
[写真]畑中由利江さん
身に付ける、そして経験を積むことが"自分磨き"になる

もちろん、プロトコールは魔法ではない。それを学んだからといって、すぐに畑中さんのような優雅な女性に変身できるわけではない。そこからがスタートなのだ。

「プロトコールを身につけたら、それを使って自分を磨くのです。そのために必要なのは経験ですね。私は、皆さんがより輝く可能性を広げるためのドアを開ける鍵を差し上げる役とでも言いましょうか」

生徒たちは、外交官の妻から、航空会社の客室乗務員、ホテルマン、国際的な業務を任されているキャリアウーマン、そして旅行を優雅に楽しみたい人までさまざまだ。その中には、畑中さんの生き方に憧れてやってくる人も多い。

「スマートな振る舞いには無駄がありません。自信を持ち、目的がわかっていれば、迷いもなく行きたい所にまっすぐ行かれます。それは、人生においても同じなのかもしれませんね」
(text / jun makiguchi)

畑中由利江

エコール ド プロトコール モナコ主宰。
スイスのフィニッシング・スクール ヴィラ・ピエールフー卒業。パリのコルドン・ブルー修了。ホテル・リッツ並びに南仏屈指のレストラン、ロジェ・ベルジェにて料理を学ぶ。後に、東京にてレストランプロデュース。コードダジュール地域並びにモナコ公国にてのウエディング・プランナー。現在、モナコ公国在住。日本とモナコ公国間の文化交流コーディネーターとして活躍。日本のテレビ・レポーターとしてはじめてモナコ公国王室の中で、アルベール王子にインタビューする。

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