
主人公の彩子は、女性にとってターニングポイントである30歳ですね
河瀨直美監督(以下、河瀨):今回、長谷川京子さんとお仕事をさせていただくことになった時点で、等身大の彼女の姿がリアルに描ければいいなということで、彼女の実年齢である30歳という年齢が設定されたんです。30歳前後の女性というのはすごく悩んでいる。自分もそうだったんですけれど。夢や希望という20代前半で抱いてきたものに対してはある程度見えてきている。

例えば、就職して自分の立ち位置は見えてきたけれど、内面的なところを試されたりするんですよね。そんな環境の中で彼女たちが疲れているような気がしていて。表面的な美しさを表出するがあまり、本当の自分とちょっと離れていたり、無理したりしている人たちにとって、本当の自分を見つけるきっかけになる映画が作れたらいいなと思って、主人公の年齢設定を30歳にしたんです。
長谷川京子(以下、長谷川):20代後半の漠然とした不安感をやはり私も経験しています。とりあえず、自分の身の回りの仕事はこなせるし、余裕もできた。でも、次のステップに行きたいけれど何をしたらいいかとか、恋愛を結婚に発展させたいとか、付き合い方を変えたいとか考えますよね。今の女性はすごく向上心があって、情報もいっぱい持っていて、いろいろなことが出来るはずなのに、どの立ち位置にステップアップしたらいいのかわからないという不安感がある。何処に行ったらいいんだろうという自分探しみたいな部分ですね。まさにそれが、私の演じた彩子がタイを訪れた理由だと思うんです。そういう意味では、主人公と同じ経験を持っています。
撮影現場だったタイで感じたことは?
長谷川:自分探しをする意味では、今まで自分が生活していた環境を変えるというのは一つの方法ですよね。国外に出ると、自分の立ち位置が明確になる。自分の国を離れて、海外で地に足をつけたときに、日本人というアイデンティティーが明確になってきますから。私自身、今回タイに行き、フランス人やタイ人のスタッフ、役者さんと一緒に仕事をして、自分は日本人なんだと実感しましたからね。それと同時に、「日本って、どんな国」と聞かれて、自分が思う日本って何なんだろうと考えもしました。タイには、甘やかされた環境にいる自分とは全く違う生活をしている人たちがいて、死と隣り合わせに生活している人たちがいる。彼らの生活は、とってもシンプル。いつ危ない目に遭うかわからないという危機感もありますが、本当の幸せを知っているなと思ったんですね。反対に、とりあえず何でもできるような環境に身を置いているのに、あれができない、これが思い通りにいかないと文句を言っている自分が甘えているなと思ったんです。恵まれ過ぎていて、恵まれていない自分がいるなと。でも、結局それは環境のせいじゃなくて、自分自身の問題、自分自身が巻き起こしている問題なんですよね。それは作品からも感じたし、出演していて感じたことでもありますね。
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日本からひとり旅立ち、タイにやってきた彩子、30歳。漠然とした不安を抱えた人生をリセットしたいと思い立った旅だが、言葉も勝手もわからず、不安と苛立ちは募るばかりさらに、ホテルへ向うはずのタクシーが辿り着いたのは、混沌とした森の中。そこで出会ったのは、フランス人青年と、伝統的な高床式の小さな家に住むタイ人母子。そこでタイ古式マッサージに触れ、彩子は言葉も通じないままに、見知らぬ人々と七つの夜を過ごす。
監督:河瀨直美
出演:長谷川京子、グレゴワール・コラン、村上淳、キッティポット・マンカン、ネーッサイ、ヨーヘイ
配給:ファントム・フィルム
劇場情報:2008年11月1日(土)より、シネマライズ、新宿武蔵野館他全国公開中!


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