初めてお会いになったとき、お互いの第一印象はいかがでしたか?
河瀨:長谷川さんはあまり飾り気がない人だなと思いましたね。
長谷川:私も、河瀨さんってあまり飾り気が無い人だなと思いましたね。あまりというか、全く(笑)。初めて会う方って私をテレビなどで見ていたりして、情報があるんですよね。その情報を踏まえた目線で接してくださるんです。それは、私に対する敬意でもあるんでしょう。でも、河瀨さんは全くそれがなかった。何も誤魔化せない、誤魔化しても見破られてしまう、そんな目をなさっていて。真っ直ぐで先入観のない、人を人としてきちんと見ようと思ってくださるのがわかりましたね。
河瀨:最初に会ったあと、確か携帯電話の番号を交換したんですよね。電話をして、普通に1時間ぐらい恋愛話とかしていましたね。
長谷川:そうでしたね、恋愛の話を。
河瀨:あんまり、映画と関係のないような感じなんだけれど、どういう電話をしているのかなとか、そんなところから考え方とかも探りました。自分の恋愛話をしたかどうか覚えていませんが。。
長谷川:それは追々いっぱい聞きましたよ(笑)
河瀨:初恋の話もね。この映画の主人公が、タイの僧侶に初恋の人をどこか重ね合わせたりしているところがある。例えば、もうこの人じゃなきゃ絶対にいけないと思っていた時代、物事に対する執着も含めて、そういう時代に帰っていくという構想も物語の中にあったので。今の日本は特に恵まれていて、選択の余地がいっぱいある。だけど、本当に大切なものというのがあった時代のことを思い返して欲しいということだったので、そういう話もしましたね。

本作での長谷川さんは今までにないような表情や感情を見せていましたが、 脚本がない河瀨監督の現場で、戸惑いなどは感じませんでしたか。
長谷川:明確に役の設定がない、台本がないと言う意味では、確かに戸惑いはありました。やはり今まで役をもって、セリフをもって入ってきた現場なので、そのヴェールを全部とって、自分自身が感じた感情や言葉を発しなくてはならない現場というのは、初めてでしたから。でも、その現場を経験したくて受けさせていただいたお仕事ですからね。それ以前は、キャラクターを明確に出す必要のある仕事が、良し悪しというのではなく多かった。だから、明確ではない感情の細かい襞を表現しなくてはいけない河瀨監督の現場が私には必要だったんだと思います。役設定はもちろん大事。でも、役を綿密に練って作っていく、役に忠実に演じるだけではなくて、もっと自分の要素を押し通していってもいいのかなと、この現場を経験して思うようになりました。

日本からひとり旅立ち、タイにやってきた彩子、30歳。漠然とした不安を抱えた人生をリセットしたいと思い立った旅だが、言葉も勝手もわからず、不安と苛立ちは募るばかりさらに、ホテルへ向うはずのタクシーが辿り着いたのは、混沌とした森の中。そこで出会ったのは、フランス人青年と、伝統的な高床式の小さな家に住むタイ人母子。そこでタイ古式マッサージに触れ、彩子は言葉も通じないままに、見知らぬ人々と七つの夜を過ごす。
監督:河瀨直美
出演:長谷川京子、グレゴワール・コラン、村上淳、キッティポット・マンカン、ネーッサイ、ヨーヘイ
配給:ファントム・フィルム
劇場情報:2008年11月1日(土)より、シネマライズ、新宿武蔵野館他全国公開中!


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