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海外からの見学者も多い、大蔵さんのお稽古場「誠翔會」では、趣味として勉強したい方、短期間だけでもやってみたい方、またプロの狂言方として活躍したい方など老若男女問わず随時募集中。着物を着ての稽古、立ち姿、謡、歩き方、また、狂言から見る歴史等などが学べます。興味のある方は、まずは、体験入門からいかがでしょう?

誠翔會事務所:
e-mail Seisyoukai@ohkurakyougen.jp 稽古場所 
東京支部:東京都港区三田 (毎週火曜日 18時〜21時 月4回)
松戸支部:千葉県松戸市新松戸南 (月2回 隔週の土日のどちらか)

室町時代から約700年も続く、大蔵流狂言の家元に育った大蔵基誠さん、30歳。 その先祖は、室町時代の1260年代から続き、織田信長や豊臣秀吉、そして、徳川家のお抱えになるほどの名家だ。その若き伝承者、大蔵基誠さんが狂言を身近に感じてもらおうと立ち上げた誠翔會には、毎週火曜日の夜、狂言を初めて習う社会人のお弟子さんが通う。稽古場では現代の日常では使わない言葉から動き方、歌、狂言の持つ笑いの表現など、厳しくとも親切に教えてくれる。そして、稽古場にはいつも笑いが溢れている。

大蔵基誠(おおくらもとなり)

能楽師狂言方大蔵流 25世大藏彌太郎の次男、祖父の彌右衛門、父の彌太郎に師事。3歳から稽古を始め、5歳の時「以呂波」にて、初舞台を踏む。今日までに「末広がり」「三番三」「釣狐」を披く能楽堂での公演はもちろん日本各地での学校狂言や海外公演で子供達にわかりやすい狂言教室・養護施設でのボランティア活動と狂言の発展・能楽界の発展に意欲的に取組む。2009年、NHKスペシャルドラマ「白州次郎」で次郎の兄役に挑戦。古典の楽しさを広めるために、様々なジャンルとのコラボレーションを実現させる。また海外では「字幕を使った狂言」を東欧で公演し、いずれも好評を得ている。「楽しむ」を基本に、狂言を通して日本の伝統の素晴らしさを伝えるために世界で奮闘中!
大蔵基誠公式Websサイト

狂言とは喜劇。人間の弱さを笑いにしたもの。当時の日常生活を題材にした対話劇である。登場人物は実在の人物ではなく、殆どが「大名、主人、婿、女、山伏、鬼」などと漠然としている。能は源氏物語など実在した人物に沿った物語だが、狂言は、能のパロディだから、登場人物は実在しないのだ。喜怒哀楽や、人間らしいおかしさ、失敗など、身近で庶民的な観点からの笑いが狂言のトピックスだ。

例えば「鬼瓦」という演目では、山の中で鬼に会ってしまった男が、誰かの顔に似ているなあと思ったら、自分のかみさんの顔だった。そう思うと、急にかみさんが恋しくなり泣いちゃった。泣いている場合ではないからすぐ帰ろうと笑って帰る。 砂糖のつぼには毒が入っているから近づいてはならぬ。でも毒でも近づいてみたいのが人間の心理。追い込まれた弱い人間の心理を笑っている。間抜けな駆け引きや、わかっているのにひっかかってあげる心の広さ。悪を笑って許す許容範囲の広い笑いである。

狂言には、演目の終わりを笑いで幕を閉じる「笑い止め」というのがある。ほかに「追い込み」、「怒り止め」と全部で3つのスタイルがあるが、大藏流では、180曲のうちの60〜70%が笑いで終わります。解釈の捉え方は人それぞれだし、受け手にまかすため、答えがないから毎回違う。そこに室町の時代から人々は知性と感性を刺激されてきたのであろう。稽古場に訪れ、大蔵基誠さんに話を聞いた。

笑うことによって、気持よく前向きになれるから、笑いを、人間として大事にしている

「狂言というテクニックは家元の父親に習ったけど、笑いのネタは自分で見つけるもの。現代と昔の笑いのツボは似ているが、現代人には笑えないところもある。海外では笑う場が違う。東京と大阪ですら、笑いの種類が違うからその土地の持つ性質とそこに在る人をよく分析して表現するのも笑いのセンスのひとつです」

伝統芸能の台本をよく読み解いて演技を磨くだけでなく、より人間の幅が出るよう、積極的に自分の笑いをハントしにいく。その笑いの感性は子供時代が重要と、子供達にもわかりやすい狂言教室を開くなど、狂言の発展に意欲的に取り組んでいるという。 「幼稚園でパフォーマンスとワークショップを行ったとき、子供が笑った時に、親が気を使って『笑ってはいけませんよ』と止めたんです。笑いは経験だから自然に笑うことが必要。子供はつぼが広く、表現が広い。先入観がないから、自分達の生活と違う話し方にイントロから堪えられずに素直に笑う。その感覚を大切にしたい。狂言の笑いは弓の弦が切れた時と一緒で、張り詰めた空気が切れた時、思いがけない笑いに繋がるからです。だから、最近は親御さんに子供たちが笑ったら止めないでくださいと前置きします」

小学校時代はサッカーに夢中で、狂言が仕事になるという感覚がなかったという大蔵さんは、現在一児の父でもある。 「3代続けば、立派な“Natural Born Kyogen”、少しずつ息子に叩き込んでいます。教育も何度も言ってわからなければ、自分に理由があると思って、考えなおします」

3歳から狂言を学び、早くから大人の世界に入ってきただけあり、子供にも謙虚に接する。後継者を育てていく真摯な姿勢には、伝統が持つ気品が感じられ、お弟子さんも、観客をもひきつけていく。実際、大蔵さんの1つひとつの所作は丁寧で美しい。手の動き、身のこなし、伝統を受け継ぐ体は女性から見ても勉強になる。

ヨーロッパ及び東欧、ロシア、スウェーデン、トルコなど海外での公演も精力的にこなす大蔵さんにとって、笑いは世界の共通語。世界に向けた日本魂と伝統の伝承者でありたい。大蔵家という伝統的な一家にたまたま生まれ、狂言とは、たまたま家にあったもの。だからこそしきたりを大事にして、狂言は神様に捧げる芸能だということを見てもらいたい。

伝統芸能は、日本人の魂。その魂を守り、伝えることが僕の使命であり、起爆剤

そんな熱き魂で立ち上げたのが、「さくっと狂言」。 難しいと思われがちな伝統芸能・狂言をシンプルに親しんでほしいとの思いから、若手の演者を中心に自ら企画した公演だ。狂言が初めてという方にも馴染みやすい演目を選び、舞台挨拶では、狂言の見方のポイントをユーモアを交えて解説してくれる。時間もさくっと、一時間余り。太鼓や能管のお囃子も楽しめる。長身でダイナミックな動きの大蔵さんの演技を目で追いながら、笑えること間違いなし!

悠久の時を経て尚、伝わる芸能のルーツでもある狂言。人間の日常生活を現実的に描き、様々な人間模様をとらえ、生活を楽しく描く、日本最古の究極の会話劇。身近な人との繋がりがさらに重要になる傾向のある現代社会において、日常の笑いを見直してみたら、より良い社会になるかもしれない。

text / Noriko Honma(Legends Press)

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