


ふと空を見上げると、頭上でやさしく輝いている「月」。月は地球の唯一の衛星で、最も身近な天体です。地球が太陽のまわりを公転しているように、月は地球のまわりを回っています。そのため、はるか遠くにある太陽の引力よりも、月の引力は地球にさまざまな影響を与えています。
そのひとつに、潮の満ち引きがあります。太陽、地球、月が一直線上に並ぶ満月と新月の頃には月の引力が最大になり、大潮になります。満月の日に海岸に上がって産卵するウミガメや、海中でいっせいに産卵するサンゴの話を聞いたことがあるでしょうか。これらの現象も月が大きく関係していると考えられています。 人間の場合は、女性の月経周期が、月の満ち欠けのサイクル(約29.5日)にほぼ等しいことや、満月や新月の日に出産が多いことなどから、とくに女性の身体と月は深い関係があるといわれてきました。ですが、これらの現象は科学的には解明されておらず、神秘のヴェールに包まれたままなのです。
もし月が存在しなかったら、どうなるのでしょう? 地球の自転はもっと早くなり、1日の長さは今の4分の1くらいに短縮されてしまうといいます。気候はめまぐるしく変動し、地球の環境は今とはまったく別のものになっていたことでしょう。月があることによって、今の地球の秩序が守られているのです。
昔の人はいつも空を眺め、太陽や月の満ち欠け、星の動きを観察し続けることで、時間や季節の移り変わりを読み取っていました。なかでも月は、人々の生活と密接な関係を持ち、明治時代の初めまで使用されていた暦は、月の満ち欠けを基準にした「太陰太陽暦」です。その名残りから、今でも旧正月や旧盆に合わせてさまざまな行事が各地で催され、地域によっては農作業や漁に、月の暦が利用されています。
このように、古人たちは月とともに過ごしていましたが、文明の進化とともに、人々は自然のリズムを顧みない慌ただしい生活を送るようになってしまいました。忙しく、何かとストレスをためやすい社会を生きている今だからこそ、身近な天体である月を眺め、そのリズムを意識した生活を見直してみる必要があるのかもしれません。
地球と月と太陽の大きさと位置の関係
地球上で太陽と月の大きさがほとんど同じに見えるのは、太陽と地球の距離が、月と地球の距離の約400倍であることと、太陽の大きさが月の400倍という、偶然の一致による。
では、「月のリズム」に合わせた生活とはどういったものなのでしょうか? さっそく次のコーナーで詳しくご紹介していきましょう。
Report & Text by Lina Ono, photo by shiori kawamoto
星のソムリエ(星空案内人)®・フリーライター
ハワイ島の最高峰・マウナケアに登頂し、太陽・地球・月のシンクロを体感したことをきっかけに天文学を学びはじめ、2008年に星や宇宙の楽しみ方を伝える「星のソムリエ(星空案内人)®」の資格を取得。天文の知識を活かし、月のサイクルに合わせた生活術の提案、星空に親しむイベントなどを開催するほか、科学館でのボランティアやNPOなど、多岐に渡り活動中。
今春に月との生活についてまとめた初の著書を出版予定。

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