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吉田修一の描いてきたもの、描いてきたこと。そしてその向こう。

米国のジャーナリストからの評判も上々だという『Villain』。しかもただの謎解きミステリーとしてではなく、日本の市井の人々が今、何を考えどう生きているかが描かれている点に海外メディアも注目している。彼の地であっても、日本で読まれているのと同じ目線で批評されているのだ。世界の文学市場は「ポスト・ムラカミ」を探し ていると言われている。『悪人』の英語翻訳版『Villain』が国境を越え同じ感覚で読まれているという事実。世界文学として吉田作品が持っている可能性は、決して小さくないはずだ。
ニュースはまだまだある。9月1日には最新刊『空の冒険』が発売されてばかり。これは、ANAグループの機内誌『翼の王国』での連載が1冊にまとまったものである。

−最新作『空の冒険』は、ショートストーリーとエッセイの二部構成からなっていますが、吉田さんのエッセイが読める貴重な作品ですね。

吉田 『空の冒険』は、毎月機内誌に掲載される連載であると言うこともあって、その月に印象に残ったこと、思い出深い事柄が一番ストレートに出ているんです。プロローグにも書いたのですが、僕にとっては一ヶ月分の記録のような存在です。文章で構成されたアルバムと言ってもいいかもしれない。機内誌で連載されていたものですから、もしかしたら何編かを飛行機の中で読んだことがある人もいるかも知れませんね。それを改めて書籍で読んだとaき、読者の方々に当時の事を思い返してもらえると嬉しいです。

−旅先での出来事が書かれたエッセイでは、どんな事に興味を持ち、印象に残っているのかが良く分かります。吉田さんの視点を追いかけているようなイメージがあります。またそれは、小説で描かれている事と符合するように思います。例えばNYのセントラルパークで目にした年長者を敬う親切。それは『横道世之介』で、世界の希望を切り取ろうとした主人公の視点にも重なります。

吉田 『空の冒険』で書いている事って、自分の作品においてはじめの一歩なんですよね。毎月何かを感じ、ここで書いたことが、時を経て後々小説になっていったりするんです。そう言う意味でもこのシリーズは書いていてとても楽しいです。

自身のルーツと向き合うという重いテーマを『悪人』という意欲作に昇華させ、作家としての脱皮を見事に成功させた吉田修一。自身の歩んできた道や現在のことを話すその姿には気負いはなく、楽しげにさえ見える。初のミリオンセラー突破、初の英語翻訳作品の出版、そして原作・脚本を手がけた注目の映画作品の公開…。2010年は、吉田修一にとって間違えなくメモリアル・イヤーとなるだろう。しかし作家としての飛躍を成功させた彼にとっては、それもあくまで通過点に過ぎない。

「毎回別人が書いたと思わせたい」。これはかつてインタビューで吉田が語った言葉である。大きなステップアップを果たした作家が見せる新しい世界とは? 読者として、こんなにも高揚し頼もしい言葉はない。

1968年長崎生まれ。2002年『パレード』で山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で芥川賞というエンタテインメント、純文学双方の賞を受賞し話題に。07年『悪人』で毎日出版文化賞、大佛次郎賞をダブル受賞。脚本も手がけた映画『悪人』で、ヒロインの深津絵里がモントリオール国際映画祭の最優秀女優賞を受賞し話題に。9月11日より全国東宝系ロードショー。

■作家・吉田修一さんの魅力を多角的に知ることのできる公式サイト yoshidashuichi.com

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