子育ても仕事も楽しみたい…そんな願いを叶え起業し、“会社”の中に“子育て”を取り入れた第一人者が小室淑恵さんだ。
「弊社では、子連れ出勤OKなんです。まず社長である私が自ら職場で子育てしています(笑)。今の時代、育児と仕事は切り分けないことで上手くいくと思っています。昔は兄弟が多かったので、1番上の子が下の子を面倒見たり近所のお姉さんが子どもを産んで面倒を見たりと、地域社会で赤ちゃんに触れる機会は多かったのですが、今は他の人の育児している姿をみる機会がないんですよね。そう考えると、職場には子育て経験のある人がいるのに、仕事の話しかしないなんていうほうが勿体ないんです。」
そして作られたのが、育児休業者や介護・うつ病などの休業者に対してeラーニングシステムや復帰後のサポートを行う株式会社ワーク・ライフバランスだ。さらに小室さんが考えていることが、若い学生達が子育てを体験する育児のインターンシステムだった。
「今の夫婦がどうして子どもを産まないのかを考えたときに、若いうちから子どもに接する機会がなかったため、出産・育児がとてもハードルが高く思えるからだ…と気づきました。一方で仕事がどんどん楽しくなって、責任も大きくなってきてしまう。どこかの時点で赤ちゃんに触れて、『育児って自分でもできるかも! 子どもってかわいい!』という体験をしないと。学生たちは時間もあり、社会に貢献したいと思っている子も多い。働く親たちは猫の手を借りたいほど子育てが忙しい…『ん!? これはうまくマッチしているのでは?』と。ベビーシッター兼インターンを派遣するのはどうだろうと考え、まず自分の会社ではじめてみました。」
その結果、女の子はもちろん、意外にも男の子からすぐさま意識の変化が起こったようだ。「最初は逃げ腰だった男の子が、抱っこした瞬間『あ、かわいい! あったかい』って(笑)。最初の子育ての怖さは、1・2回で乗り越えられるもの。触れれば触れるほどもっと好きになるんです。家庭を持ちたいと思っている男の子は少なくないので、そういった子たちに“子育てのプレ経験”をさせてあげるのはとても重要。この実感がないと、将来家庭をもったときに、自分の生活を全く変えず、妻に子育てすべてを託してしまうんです。専業主婦であっても、子育てに夫の参画は不可欠です。孤独な育児に懲りてしまえば第2子、第3子を持つことも考えられなくなる。今の少子化の原因は実はこんなところにあるのでは?と分析しているので、ベビーシッターインターン制度が日本の少子化を救う!(笑)と思っているんですよ。」
現在、小室さんが手がけるサービスのひとつに、育児休業者の職場復帰支援プログラム『armo[アルモ]』がある。そのコミュニティーでは職場復帰するための情報交換が非常に前向きにされているという。
「一般の育児サイトでは、どうしても保育園の話題になると『小さいうちから預けるのはかわいそうでは?』といった心配の声ばかりが目立ってしまいますが、『armo[アルモ]』のコミュニティーは、現在育児休業を取っている人と既に職場復帰した人たちのクローズな場であり、保育園の利用は必須なので、むしろ預けるとどういう良い事があるのかを前向きに情報交換しています。例えば、地域コミュニティーが機能していない現代では、1年を通じて、行事を体験することが非常に少なくなりましたが、保育園では園長先生がサンタになったり鬼になったりして、行事を盛り上げてくれる。地域では同じ年代の友達が少なくても、保育園で多くの友達と接することでしっかり集団行動が取れるようになる。など復帰した先輩ママたちが教えてくれる情報は、育児休業者にとって復帰後の仕事と育児の両立を前向きに考える上でもとても貴重なのです。」
小室さんが考える子育てのスタイルは、いかに多くの人の手を借りるかということ。「一緒に子育てする人は、多ければ多いほど良いと思うんです。最近キレる子が多いと言われていますが、それは自分と違う価値観を認めることができないということではないでしょうか。これは幼少期に接点を持つ人の少なさからもきてるんじゃないかと思っています。核家族で母親にまかせっきりの育児になり、子どもが1人の価値観だけに影響を受けて育つことになります。少なくとも、父親と母親の2人の違う価値観に触れて育つことが、将来自分と違う価値観の人をどこまで理解できるかということにつながってくる。今の時代はどれだけ多くの価値観と接しながら育つか、親はそういう場をどうやって提供できるか、が課題だと思っています。だから、人の手をわざと借りたほうがいいくらいなんです(笑)。」
「実際に龍海は、私・夫・スタッフ、みんなで育てています。でも産まれたばかりの頃は、夫は以前どおりの生活をしていたんですよ。授乳が夜中も2時間おきで、全然寝れなくてフラフラになっていても、夫は起きなくて『どうして起きてくれないの?』と不満に思っていました。そんなある日、休日に仕事が入り、一日夫に見ていてもらって帰ってきたら『今日は、1日中泣かれてしまって何もできなかったよ。。。』とグチられてしまったんです。その時に、『でも、私は毎日そうなのよ、仕事も育児も中途半端で泣きたいのは私なのに…』って大泣きしてしまったんですよね。男の人は子どもが産まれても、急に実感が湧くわけではないので、夫もその時初めて『自分も変わらなきゃいけないんだ』って気づいたようですね。なんとかして2人で協力して、仕事も育児も納得がいくように夫婦のスタイルを作りたいよねと悩み、夫はなんと平日の朝食と土日の3食を作ると宣言してくれたのです。朝の弱い彼が、1時間以上も早く起床するようになり、龍海をお風呂に入れて、朝食を準備してくれます。夫は料理の腕前もぐんぐん上達したり、龍海を私よりずっと上手にあやしていたり、本当にその変化にはびっくり。あいかわらず平日の帰りは遅いのですが、2人で育てている実感を持てるようになりました。」
小室さんが感じている子育ての喜びとは、ズバリ“成長”だ。「子どもはもちろんですが、自分も成長する、夫が新たな自分の一面を見つける、会社のスタッフもみんな自立していく。 育児は思うように行かないことも多いけれど、この共通の“制約”が、お互いの自立を生み出して成長する。この年になって成長できることってあまりないですよね? 仕事でも人間関係でも、子育ては自分が成長できる貴重なチャンスだと思います。」